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2020年10月30日金曜日

10月30日


 

偵シリーズバックナンバーより~

 

「出張する妻を追え!

 

 夫の肌を忌避するようになった妻の浮気を疑い始めた。妻は薬剤師で、同業で組織するボランティア団体の役員として月に1、2回各地に出張する。妻の不在時に見たクローゼットの奥にひっそりとあった派手な下着。嫉妬に震えた。その妻が来週末名古屋へ出張する…。(前回より)

 調査当日。依頼人の夫が出勤してから1時間後、自宅にタクシーが横付けされた。O駅で降り、新幹線ホームへ向かう。東京駅で乗り換え、名古屋駅に降り立ち、会議の会場となるホテルに。既に60人ほどが集まっている。会場のドアが視認できるソファで見張る。

 3時間の会議中、妻は一度も会議室から出てこなかった。隣の会場で懇親会がある。会議が終わり一斉に参加者が出てくる。妻は懇親会に参加することなく会場を後にした。妻はタクシーを拾い、名古屋城に近い有名なホテルで降りた。チェックインをしてカードキーを受け取る。妻の部屋を特定できるかどうかが、この調査の成功の鍵を握る。

 人も多く尾行することは難しくなかったものの、ポーターが妻の荷物を持ち、エレベーターに同乗したことは予想外だった。従業員は、犯罪の未然防止のための防犯教育を受けているからだ。あからさまに警戒の目を向けてくることはないが、細心の注意を払わなくてはならない。

 後から同乗した探偵は、ポーターから階数を聞かれた。ランプが点灯しているのは、10階と14階の2つ。エレベーター内には、妻とカップル1組と探偵一人。とっさに14階と告げた。10階で降りないことをひたすら祈る。しかし、妻は10階で降りる気配。不審がられずに、妻とポーターとともに10階で降りなければ部屋の特定が困難になる。

 そして10階で止まった瞬間、探偵は携帯電話のフェイク着信(実際に電話はかかってきていないが、着信音を鳴らすこと)を作動させ、迷惑のかからないようにと、うまく10階で降り、部屋を特定した。

 内偵の結果、妻の宿泊する部屋はキングサイズのダブルの部屋だった。ロビーで待機する探偵に、部屋の出入りの映像を抑えるために適した部屋番号を伝えて、宿泊可能か確認させる。もちろん、不審がられず予約するために、「亡き妻との思い出の部屋…」というシナリオでアプローチした。幸い、その部屋がとれた。そして、約1時間後…。会場で見かけた50代後半の紳士然とした男性が部屋の中に消えた。明日も会議がある。会議終了後は、男の尾行に切り替えその素性を暴く。仕事とはいえ夫の気持ちを思うと、その現場には殺伐とした空気が流れた

 (前回はホームページをご覧ください)

 *本文は依頼人の了承を得てプライバシーに配慮しています。盗用・無断転用・無断転載を一切禁じます。

 

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