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2020年11月20日金曜日

11月20日

 


探偵シリーズバックナンバーより~

 

 「同情に始まり暴力という恐怖に支配された妻…①

 

 弁護士事務所からの紹介でGKを訪れた20代後半の妻とその両親。3歳と1歳の子がいる。夫は、ひと回り年上のディーラーの営業マン。見かけも、人当たりもよく、営業成績もトップクラスで上司の評判も高いが、私生活は荒れていた。離婚歴もある。結婚するまで、彼女(妻)は、彼(夫)と同じ職場だった。その当時、自分の顧客の女性と不倫していたことは社内に知れ渡っており、その不倫関係が発端となって、先妻と離婚した。

 当時、彼女は彼の営業補助的な仕事をしていたので、彼の顧客や行動範囲などもある程度把握していた。もちろん、不倫相手の氏名・住所まで分かっていた。離婚後もその女との関係が続いていたことも知っていた。彼女は、部下として仕事をしていればと思い何ら気に留めることもなかったが、ある日を境に、彼の覇気が消えうせてきた。

 それが気になって言葉をかけると、食事に誘われるように。彼女は、ただ義務的な感覚で食事につきあっていたが、彼は身の上話をするようになっていった。両親は既に他界し、兄弟仲も悪く、一人娘は元妻が連れて行き、会うこともかなわない。天涯孤独の身だと目を潤ませた。

 バリバリの営業マンという姿しか見たことのない彼女は、あまりのギャップにほだされ、同情してしまったと後悔する。結局はその不倫相手とも別れた。それからというもの、彼のことが気になってしかたがない。「恋、いやそれは違う。かわいそうな身の上に同情しただけ」と自分に言い聞かせて仕事をした。しかし、深い関係になるには時間はかからなかった…。

 そして、情に身を任せた一時的な感情の成り行きと、恋人でもない関係が半年を過ぎたころ、妊娠してしまった。結婚などまったく考えていなかった彼女は、おなかの子どもに自責の念があるものの、当然、中絶手術をするものだと思って彼に告白したが、思いもかけない展開になった。彼は、「結婚しよう。子どもを産んで温かい家庭をつくろう」と。そして、彼女は退社して籍を入れた。

 それから3年、平穏な時間が流れていく。このまま穏やかな生活が続くものだと思っていた…。次第に夫の行動に変化がおきていく。それまで、どんなに遅くても必ず帰宅していたのに、飲み会のあと車で寝たとか、休日のゴルフが多くなったり、子どもと過ごす時間もなくなっていく。そんな状態が半年続いたが、妻は夫を問い詰めることはしなかった。理由は、1年前に家族のためにと数千万のローンを組んで家を購入してくれたこと。そこまでしたのに、家庭を壊すことはないと妻は確信していたからだ。しかし、それを放任したことが後に取り返しのつかない状況に陥ることになっていく…。

 (次回に続く)

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