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2021年2月8日月曜日

2月8日

 


アスポ探偵シリーズより~

「老いらくの不倫妻の浮気、夫の苦悩

 

 【近年、妻の浮気の相談に来る夫の数が増えている。一昔前は、浮気というと、夫と相場が決まっていた…】70歳の夫が相談に来た。背を丸めた小さな体に、気の弱そうな顔つきから、聞き取れないほどの声で口を開く。妻は65歳、ホテル客室の清掃のバイトをしている。

 一方、夫は、名のある会社を定年まで勤め上げた技術者で、退職後は、体調を崩し家にいる。妻の浮気の疑惑は、妻の友人からの告発だった。妻と仲たがいしたのがきっかけだった。「○○工業という会社を営んでいる、65歳の男と浮気している。男の妻は5年前に亡くなっている」というもの。夫には、まるで青天の霹靂(へきれき)。確かに、ここ数年来、夫婦仲はよくない。特に、夫が定年退職をしてからというもの、どんよりした空気が蔓延(まんえん)してきた。妻は、食事は用意するものの、一緒の食卓では食べない。二人で出かけるようなこともない。当然のごとく、夫婦仲が悪い家には、子供たち夫婦、孫も寄り付こうとしない。夫は、告発を受けてから眠れない日々が続く。気の強い妻には真偽を確かめるすべもない。まさかこの年になってこんな思いをしようとは。眼鏡がみるみるうちに曇っていく。

 その不安は次第に、妻の勤務先や、男の家の近くを徘徊(はいかい)するようになっていった。そして、夫が目にした男は、体も大きく、こわもてで一見堅気には見えない。自分と正反対の風貌に、悔しさとコンプレックスが襲いかかる。病的なほど毎日徘徊してしまう。しかし、その行動をあざ笑うかのごとく、徘徊しているところを撮影され、慌てて逃げ帰ってくる始末。ばかにされている。今更妻を愛しているというものではない。ただ、70歳でも、最低限の男の矜持(きょうじ)は持っていることをわからせたい。

 調査開始。妻と男の両方を張り込む。二人は、同時刻に家を出た。妻の向かった先は、郊外のショッピングモール。しかし男は、反対の方向へ車を走らせる。環状線を時速40㌔で遅走したり、わき道に逸れたと思うと、車を停車させる。そしてUターン。これは明らかに、警戒している者の行動だ。夫が何度も尾行に失敗したことが要因だろう。難しい尾行になる。しかし夫の矜持を守るため、失敗は許されない

 (次回に続く)

 *本文は依頼人の了承を得てプライバシーに配慮しています。写真はイメージです。文章とは関係ありません。

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