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2020年7月13日月曜日

7月13日




探偵シリーズバックナンバーより~

「まさか!!…妻の失踪

 「妻を捜してほしい…」と30代の夫と、その両親、妻の両親の5人で相談に来た。夫の両親が営む会社の顧問弁護士からの紹介だった。妻は夫の両親と中学生、小学生の2人の子と同居している。夫と妻は高校時代から交際していて、20歳の時、妊娠したのを機に結婚した。両家の関係は極めて良好で、舅(しゅうと)と姑(しゅうとめ)との仲もよく、経済的にも余裕があり、妻はずっと専業主婦だった。経済的には働く必要は無かったが、子どもたちも手を離れたことや社会的経験をつみたいということで、家族からの快諾を得て、親友が働いている病院の看護助手として働き始めた。
 それから半年、妻の行動に変化が現れた。勉強会・送別会などと理由を並べて帰宅が遅くなることが増えてくる。しかし、家族はまったく疑いを持つことは無かった。その変化が如実に現れたのは、小学校の運動会に参加しなかったことだ。同僚から勤務交代を頼まれたという理由だった。これまで運動会には両家の両親や、叔父・叔母までが一堂に会して参加することが伝統行事だったので妻が参加しないことに、一抹の不安を感じたと依頼人は振り返る。
 何かおかしいと微妙な空気を感じながらも、これまで通り平穏無事な生活を続けてきたという。しかし、事件は突然舞い降りた。いつも通りに出勤したはずの妻が帰宅しなかった。携帯電話も通じないし、勤務先に確認すると、2週間前に退職したと…。親友に聞いても、その理由はまったく分からないとそっけない。連絡が途絶えてから5日が過ぎた頃、妻から手紙が届いた。『…ごめんなさい。子どもたちをよろしくお願いします。不満があるわけではありません。好きな人ができました。捜さないでください…』などとつづられている。
 家族は意味が分からない、何が起きたのかと真剣なまなざしで訴えかけてくる。話を聞いた我々は、最近顕著な傾向にある「母親・妻よりも女になりたい」という心理であると思い当たる。夫、両親ともに、何不自由なく生活させてきた自負があり、この状況が呑み込めない。『人間は安定すると刺激を求め、不安定だと安定を求める』という心理が理解しがたいのだ。つまり、良き妻、良き母親に見切りをつけ、「ひとりの女に立ち返った」ということなのだ。
 捜索開始。手掛かりは妻が乗っている車と手紙の消印が県北だということ。しかし、我々は妻の親友が何かを隠していると踏んだ。必ず何かを。とても仲が良く、なんでも打ち明けていた唯一無二の存在なら、心配して当たり前なのに、そのそぶりもない。明らかにおかしい。その女性を尾行することに。すると驚愕の事実が明らかになっていく。
 (次回に続く)
 *本文はいくつかの事例を基に構成されています。盗用・無断転用・無断転載を一切禁じます。


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