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2020年7月3日金曜日

7月3日




探偵シリーズバックナンバーより~

「溺れる夫①」

 弁護士から連絡があった。「相談者を向けるからなるべく早く証拠を。夫が秘密裏に別居する算段をしている。別の探偵に頼んだけど2度ほど失敗してしまったらしい」と。30代後半の妻が相談に来た。【夫が変わってしまった。ここ3カ月で子煩悩で優しい夫はいなくなった。離婚したいとも。料金の安さにひかれ別の探偵に依頼し2度も見失ったが、女性がいることだけは分かった。弁護士から家を出て行かれる前に不貞の証拠をつかんでおくべきとGKを紹介された】。妻と両親が依頼した探偵の報告書を持って相談に来た。上品でそつがなく、育ちの良さがにじみ出ている。夫は四国出身。2人は互いが大学2年で知り合い、共に都内で就職し24歳の時に結婚。30歳での妊娠をきっかけに、妻の実家のある栃木県の県南に越してきて、夫は新幹線通勤することに。妻の両親は実家近くのマンションを購入し、娘家族を住まわせた。夫の穏やかな性格と頭の良さ、まじめさを気に入り愛情を注いできた。車を買うと言えば頭金を出す、孫を連れて四国に帰省すると旅費も出した。笑顔が絶えない温かい家庭だった。
 そんな順風満帆な生活にほころびが見えたのは、子どもが幼稚園の年長になった頃、夫が駅に併設してあるスポーツジムへ通い始めてからだった。徐々に帰りも遅くなってきた。土日が休みで、必ず子どもと一緒に過ごし日曜日は実家で夕飯を共にすることが習慣のようになっていたが、休日出勤になったとか、さまざまな理由を付けて明らかに子どもと両親との距離を置くようになっていったという。とうとう離婚したい、別居したい、養育費はいくら払えばいいのかと言いだした。妻は自分に悪いところがあれば直しますとすがった。しかし、夫の行動はエスカレートしていく。外泊も増えた。そして安さが売り物の探偵に調査を依頼した。調査初日、電車内で女性と落ち合ったが、新宿のデパートで見失うという失態を犯した。女性の顔も満足に撮影されていない。別の調査日には夫が迎えに来ていた女性の車に乗り込んだのを、赤信号で行かれてしまったと、平然と言われたという。とてもプロの探偵とは言えない。怒りすら覚える。こんな素人同然が、探偵の看板をあげていることが許しがたい。
 調査初日はジムで遅くなるという金曜日。帰宅時間を想定して新幹線の改札口を見張る。午後7時、夫の姿が見えた。改札を出てジムとは反対の出口方面に向かう。時折立ち止まり、ゆっくりとした仕草で後ろを振り返ったり、反転を繰り返したりと、明らかに警戒している動きに他ならない。前の探偵がコゲていた(尾行に気付かれること)ことを意味している。GK探偵の威信をかけた尾行が始まった。
 (次回に続く)
 *本文はいくつかの事例を基に構成されています。盗用・無断転用・無断転載を一切禁じます。

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