Powered By Blogger

2020年7月6日月曜日

7月6日






探偵シリーズバックナンバーより~

「溺れる夫②」

 【弁護士から連絡があった。夫が別居の算段をしているから不貞の証拠をつかんでほしいと。依頼人は安さが売りの探偵に依頼したが、デパートで見失ったり、夫が乗り込んだ女性の車に赤信号で追いつけなかったという失態を犯した。女性の顔すら満足に撮影されていない。とてもプロの仕事とは言えない。こんな素人同然が探偵の看板を挙げていることが許しがたい…】
 調査初日、ジムで帰宅が遅くなるという日。午後7時に新幹線改札口に姿を現した夫はジムとは反対の出口に向かう。時折立ち止まりゆっくりと振り返るなど、明らかに警戒している。これは、依頼人が前に依頼した安さが売りの探偵がコゲていた(尾行に気付かれる)ことを意味している。夫は警戒の目を向けながらも、結局はジムに入った。車・バイク・自転車を準備して尾行に備える。午後9時過ぎ、夫はジムから一緒に出てきた女性2人の車でファミレスへ。2人の女性は明らかに50歳を超えているであろうと思われる。1時間後、夫は女性たちの車で自宅マンションへ。夫が降り女性たちの車はそのまま立ち去った。
 帰宅したため調査終了かと思った時、夫は入り口には入らず、マンションの裏手に回り細い路地を進んでいく。5分ほどのコンビニへ入った。本の立ち読みをしながらも、しきりにスマホを操作している。それから10分、コンビニの裏手にさっきの女性が運転する車が停車したのを見逃さなかった。夫はその車の後部座席に乗り込んだ。その車は制限速度を超えることなくゆっくり走行し、時折路地に入り停車をして尾行されていないかどうかの警戒の目を向けてくる。GKの探偵たちは調査能力の高い探偵として、県内のみならず都内の弁護士からも調査の依頼を受けるプロとしての矜持がある。車を入れ替えバイクを入れ替え、慎重さを保ちつつ、大胆に攻めることを恐れず、見失わない。
 車の動きから近隣にある2軒のラブホテルのどちらかに行くと想定して、別のスタッフを先回りさせた。案の定、その1軒のホテルへ車を乗り入れた。依頼人のため、何としても不貞の証拠と相手の家を割り出さなければならない。2時間後、女性がカーテンを開けラブホテルから出て、夫のマンション近くの裏路地へ。後部座席から夫が降りて車は走り去った。女性の車を追う。車で15分ほどの水田地帯の中の一軒家に入った。後日の調査で、この女性は50歳代半ばの未亡人で、実家の両親と暮らし、病院で看護助手の仕事に就いていた。報告の日、妻は両親と兄を伴ってきた。その瞳には涙は無かった。真実と向き合って良かったと言い残して、弁護士事務所へと向かった。
 (前回はホームページをご覧ください)
 *本文はいくつかの事例を基に構成されています。盗用・無断転用・無断転載を一切禁じます。


0 件のコメント:

コメントを投稿