Powered By Blogger

2020年5月29日金曜日

5月29日






探偵シリーズバックナンバーより~



「地位と金と女…2代目の横行②」



 【創業者社長の死から半年。2 代目となった息子は、高級服飾品を身に着け高級輸入車で通勤。不公平な人事と、女性社員との不倫疑惑。ついには、その女性の言いなりになって会社を蝕んでいる。このままでは会社はだめになる。株式は創業家が70% を保有し、そのうち30% は先代社長の妻が保有している。他の30% 保有の株主と先代の妻に理解を求めて、株主総会で闘うしかない。それが、社員90 人のため、苦労して創業した先代のため。2代目と女性の調査が始まった】

 その女性社員は離婚歴があり子供と実家で暮らす入社15 年の経理課の社員。夜、飲食店でバイトしているのではとの噂が絶えなかった。調査はまず、この女性の退社後の行動を追う。調査3日目の金曜日の退社後に動きがあった。一旦帰宅するものの午後7時過ぎ、迎えに来た黒いワンボックスカーに乗り込む。向かった先は駅東口の繁華街。同年代の女性3人とマンションに入る。40 分程経過し、ドレスに着替え髪をアップにしたその女性が出てきた。すると、向かい側にある6階建てのキャバクラ店が軒を連ねるビルの4階へ。やはり飲食店でバイトをしているという噂は本当だった。

 バイトしている証拠を押さえるため、探偵2人が店に潜入する。本人と接触するため、場内指名(店に入り、気に入ったキャストを指名して席に呼ぶこと)をして、その女性社員を席に呼ぶ。会話を録音し働く様子も隠しカメラで映像に押さえる。30 分後、女性に指名が入った。そこには1 人で入店してきた2代目がいた。探偵はトイレに向かいながら2人の様子も押さえる。2代目は、女性社員がバイトをしていることを知っていた。就業規則(二重就業の禁止)に抵触することでもある。探偵たちは店を後にして、張り込み開始。結局この日は2代目は深夜1時頃に代行車で、女性は3時に店の車でそれぞれ帰宅した。

 翌々日の日曜日、2代目は午前10 時頃自宅を出て、女性宅の近くのスーパーの駐車場へ。ほどなくして、女性社員が助手席に乗り込み向かった先は銀座。腕を組み笑みを見せながら銀座でのショッピングを楽しむ。その日は10 万円を超えるバックを購入した。もちろん支払いは2代目のカード。帰り道は岩槻インターで降り、ラブホテルへ。浮ついている2人は、全く警戒の目を向けて来ることもない。後日、背任行為ともいえる不正な領収書が見つかった。それは、探偵が潜入した日のキャバクラ店のもので、5人と記載された接待交際費。さらに女性に買ったバックを社用品として処理するようにとの経理課長への命令だった。その後、株主総会は終わったはず。どのような結果になったかは知る由もない。

 (前回はホームページをご覧ください)
 *本文はいくつかの事例を基に構成されています。盗用・無断転用・無断転載を一切禁じます。

2020年5月27日水曜日

5月27日


今朝は先週と比べ、車の交通量が増え
久しぶりに登校する学生の自転車姿を見ました。
一歩ずつ、日常が戻り始めているのを感じました。


←この胡蝶蘭は2度目の花が開花しました(*^^*)
大切に育てると2度、3度と花を咲かせ
GKスタッフの心を癒してくれています。











探偵シリーズバックナンバーより~

「地位と金と女…2代目の横行①」

 6月上旬、ある会社の取締役と社外取締役、経理課長という3人が相談に。その会社は創業40 年社員90 人の食品加工会社。創業者である先代の社長が昨年の春に70 歳で急死して、専務取締役だった息子が2代目社長に就任した。先代の社長は苦労人で、仕事に厳しくワンマンだったが、信賞必罰、公平な人事、人を見抜く目を持っていた人で、うるさい社長と言われながらも社員には愛されていた。業績も右肩上がりで、社員・家族の福利厚生にも力を入れており、その死は社員たちに深い悲しみをもたらした。
 相談の内容は、2代目社長についてだった。先代社長がいるときには、地味で目立つこともなく社長に意見するようなことは一度もなかった。社長に就任して半年が経過する頃に、変化が起きた。先代の社長は、贅沢(ぜいたく)品・物欲というものに無頓着で、通勤も大衆車、いつも作業着で社長室よりも工場にいるほうが長かったような人だった。しかし、2代目社長は、高級スーツや時計などの服飾品を身に着け、高級外車まで購入。工場に顔を出すこともなくなり、交際費名目の飲食店の領収書も激増した。厳しかった先代社長が亡くなり「たがが外れた」ようになったと。このような状況の中でも、先代の意思を受け継いでいる古参の役員や社員たちの奮起で業績は落ちることもなかった。
 しかし、ここ半年見過ごすことのできない事態が起きていると相談者3人は顔を曇らせた。それは、人事にも口を出すようになってきたことだ。仕事よりも社長にこびへつらう人間たちを管理職に登用すると言い出したり、意見を言うものを平気で降格させるような横暴経営が始まった。それだけではない。ある連休中に女性社員と2人で高速道路のパーキングにいる所を、他の社員に目撃された。その女性社員は離婚歴がある入社15年の経理課の社員。夜のバイトもしているのではと噂が絶えない女性社員だが、最近仕事も横柄さが目に付くようになり、急な休みが著しく増えてきた。さらに、同じ課の先輩女性社員に仕事のことで叱責(しっせき)されたときパワハラと騒いだ。その1 カ月後、社長の一方的な命令で先輩社員を工場勤務に追いやり、結局退職させてしまった。
 つまり、妻子のいる社長がその女性と不倫関係にあり、言いなりになって会社を蝕んでいるという危惧だ。このままでは、会社はダメになる。株式は創業家の家族で70% を保有しているので、役員人事も社長の言いなりになりかねない。ここは30% の株式を保有する先代社長の妻に味方になってもらうしかない。それが会社の未来のため。社長と女性社員の調査が始まった
 (次回に続く) 
 *本文はいくつかの事例を基に構成されています。盗用・無断転用・無断転載を一切禁じます。

2020年5月25日月曜日

5月25日


こんにちは
ようやく緊急事態宣言全面解除される方向となりました。
新コロナ感染をきっかけに約三か月間自粛生活を続けてきました。
今後、生活スタイルや働き方も大きく変わる新時代がくるかもしれません。
そんな中、ご家庭内やSNSでのトラブルが増加しております。
お困りごと、お悩み事がございましたら
GK探偵事務所までお気軽にお問い合わせください。




探偵シリーズバックナンバーより~

「浪費・失踪…満たされぬ心の闇②」

 【今年製薬会社に総合職として就職した次女。お盆休みに入る前日から一切の連絡がつかなくなった。会社にも体調不調でしばらく休むとの連絡があっただけ。次女は都内の女子大時代に、15 歳年上の男性と恋に落ち2カ月連絡が途絶えたこともある。浪費癖もあり、祖父母から多額の借金をしていたことも。10 年前に次女を溺愛していた父親が事故で亡くなったショックに起因していると母親は語る。父性を求め年上の男性への憧憬、浪費をすることで現実逃避をしているようだと。娘の失踪で分かっているのは、使用している車だけだったが、インスタに「彼氏ができたよ!」ということが載せられていた事実をつかんだ。この失踪の背景には間違いなく男性の影があると踏んで調査を組み立てていく。そして浮上したのが、一度体調が悪くなり自宅まで送り届けてくれた会社の男性だった。食事のたびに、娘からその男性の話が出てきていたという。娘の話す様子は会社の男性というより好意を抱いているようだったと
 手掛かりは少ない。まず、割り出さなければならないのは、その男性の住居だ。次女の部屋に残されていた社員名簿で、その男性の特定はできたが、住所は記載されていない。幸いにも次女と男性が勤務していたのは工場ではなく、管理棟と呼ばれる2 階建ての建物であり、男性の顔を視認することができる。娘が体調不良で送り届けてくれた時、母親と長女はその男性にあいさつし顔を見ている。工場だったら、顔の判別は不可能に近い。工業団地にある管理棟の出入り口を確認できるのは、道路向かいにある公園内のごく限られた場所しかない。始業前と退社後、すべての出入りする人物の映像を撮影して、母親と長女が確認。ついに、その男性が判別でき、使用する車を尾行して単身赴任先のアパートが判明した。
 翌日からそのアパートの玄関側とベランダ側を張り込むが、次女が部屋にいる様子がない。真夜中に訪ねて来る可能性も否定できない。張り込みを継続し朝になった。すると、朝5 時に男性が家を出た。早すぎる。何かあると尾行すると、男性の向かった先は会社に近い短期賃貸型の家具付きのアパートだった。そこには、次女の車も停まっていた。8時になると男性を送り出す娘の姿が見えた。男性は、週に3 回、出勤前や退社後、 娘の住居に立ち寄り、時に泊まっていた事実をつかんだ。妻子ある二回り年上の上司と不倫関係。さらには、この調査期間中に、次女の退職願いが出されたこともわかった。母親と長女に報告。この事実を現実とは受け止められない母親。次女に怒りをあらわにする長女。現在はGK のカウンセラーを介して最善策を検討中である。
 (前回はホームページをご覧ください)
 *本文はいくつかの事例を基に構成されています。盗用・無断転用・無断転載を一切禁じます

2020年5月22日金曜日

5月22日



 
探偵シリーズバックナンバーより~



 「浪費・失踪…満たされぬ心の闇①」

8月も終わりを迎える頃、50 代の母親と20 代後半の娘が相談に。相談内容は、今年大学を卒業し就職した次女が失踪したこと。次女は県内の進学校を卒業して、都内の名門私立女子大学に入学。母親は金融機関に女性管理職として勤務し、長女は新幹線で都内の商社に通勤している。次女は県内に事業所がある製薬会社に総合職として就職し実家から通勤。背景をひも解いていく。これまでに失踪の経験は? との問いに、実は大学時にと母親が重い口を開いた。大学生時代にアルバイトをしていた時、離婚歴のある15 歳年上の男性と恋に落ち、約2 カ月連絡が途絶えた後、突如その男性と結婚したいと自宅に連れて来たことがあるという。その後、次女には内緒で男性を説得し別れてもらったと。

 それからは、自宅から通学させ監視の目を怠らなかった。10 年前に次女を溺愛していた父親が事故で亡くなったショックに起因して、父性を求め後先を考えずに流されてしまうような傾向が強いと母親は言う。また、次女は浪費癖があり、浪費をすることで現実逃避をしているようで、祖父母からも多額の借金をしていたこともある。このような紆余(うよ)曲折はあったものの、無事就職し、家族3人での平穏な生活が続いていた。3人の約束事は、週に3回は家族そろって食事をとることと、帰りが遅くなる時は必ず連絡をすること。6月までは、この約束が破られたことはなく、会社の出来事もいつも笑顔で話してくれていたという。

 7月に入ったあたりから、いろんな理由をつけて帰宅時間が遅くなっていった。8月のお盆休みに入る日を境に、ラインはブロック、携帯も着信拒否にされ帰宅しなくなった。9日間の盆休み明けに母が会社に連絡をすると、体調がよくないので休みますと連絡があったという。世間体もあり、警察には家出人届も出していない。手掛かりは極めて少ない。部屋を探索するが、何も持って行っていない。分かるのは使用している車だけ。

 難しい調査になった。次女が母親と長女に話していた内容を精査して何か引っかかるものがないか検証していくことと、インスタやラインの分析しかない。すると、インスタに「彼氏ができたよ!」ということが載せられていた。この失踪の背景には間違いなく男性の影があると踏んで失踪の背景を洗い出していく。母親と長女に会話の中で出て来る男性はいなかったか、回顧してもらう。すると、一度体調が悪くなり会社の男性が自宅まで送り届けてくれたことがあり、食事をするたびにその人の話が出てきていたという。思い返せば、娘が話す様子は確かに好意を抱いていたようだったと感じていたと…。

 (次回に続く)

 *本文はいくつかの事例を基に構成されています。盗用・無断転用・無断転載を一切禁じます。

2020年5月18日月曜日

5月18日


探偵シリーズバックナンバーより~

「病床から託された手紙…忘れられない彼女へ」

 昨年10月のこと。10年前に娘のことで調査をしたことのある70歳を過ぎた女性が再び相談に訪れた。今回は、もうすぐ50歳を迎える長男の相談だった。25年ほど前、息子に結婚したいと告げられたが反対してしまった女性がいたという。その女性は交通事故の後遺障害がある母親と2人暮らしであったことや家が県外で遠く、結婚を許す気にはなれなかった。女性の家庭環境を知るまでは、たまに家に遊びに来た時も、温かく迎え入れていた。しかし、彼女の家庭環境を耳にしてから冷遇するようになってしまい、その女性が身を引いたのだろうと。息子はその後、交際した女性がいたが長続きせずに、現在も独身でいるという。
 その息子が、肺がんを患らってしまった。手術は成功したが、息子から懇願されたことがあると相談に来た。その彼女が元気でいるのか、幸せになっているのかどうしても知りたい。そして、許されるなら一度会いたいというものだった。入院している時、彼女との思い出がよみがえり、気になって仕方がないと打ち明けられたという。ぜひ捜してもらえないかと。その話をする母親は、嗚咽していて言葉にならなかった。自宅を訪問して息子に会った。話を聴く。見せられたのは、当時二人で海に行った時の白黒写真。かわいらしい女性が笑顔で写っていた。ひびだらけの写真は、息子の時空を超えた思いの表れだった。彼女に渡してほしいと手紙が用意されていた。
 断片的な記憶の一つ一つをパズルのように埋め込んでいく。手掛かりは多くない。しかし、何としても彼女にこの手紙を渡さなくてはならない。調査開始1カ月。女性の居場所が判明した。一度結婚したが離婚して20歳になる娘と東北に住み、介護士として老人ホームで働いていた。GKの女性スタッフが接触して事情を打ち明け、大切にしていた写真のコピーと手紙を渡した。戸惑いと驚きを隠せなかったが、最後は笑顔で手紙を受け取ってくれた。1週間後、GKに手紙が届いた。そこには、おばさんになったし、当時のままの私を記憶に留めてほしいから、会わないほうがいいと書かれていた。ただ、よければ電話してくれるように伝えてくださいと。
 今年になり母親から感謝の思いが詰まった手紙が届いた。この数カ月彼女と話せた息子は楽しそうだったと。私も彼女に謝罪できて気持ちが晴れたとも書かれていた。ただ、息子はがんが転移し入院、覚悟が必要ですと書かれていた。誰しも、20 歳前後の大人の階段を登り始めた時代の交際相手は鮮明な印象を持っている。高齢者の初恋の人探しは例外なく20歳前後に交際していた相手である。人は、心や体が弱ったり、余命を考えた時、最も印象深い思い出を回顧するものかもしれない。
 *本文はいくつかの事例を基に構成されています。盗用・無断転用・無断転載を一切禁じます。


2020年5月13日水曜日

5月13日


417日更新てん丸ブログ続き

探偵シリーズバックナンバーより~

「家を出た夫…まさかのすみかと女②」

 夫は自動車メーカーの気鋭のエンジニア。妻と知り合ったのは大学院の研究室。6年の交際を経て結婚2年目になる。夫は仕事に明け暮れ、妻は夫が未来や夢を話してくれるのが何より好きだった。夫を支えるため、妻は電気メーカーの商品開発のキャリアを断念し、出張や残業のない部署に転属した。そこまでして夫が仕事に打ち込むことができるように、妻は尽くしてきた。ところが、今年1月中旬、一方的に「君といるのに疲れた」と突然家を出た。行き先は一切教えてもらえなかった。2 月中旬、離婚すると伝えてきた。弁護士に相談、女の人がいるのでは…との指摘に事の重大さに気づかされた。
 調査開始。本人の居住地を特定することが先決。県内の事業所の近くに潜伏しているとの想定とは違い、都内の夫婦が住んでいた隣駅の5階建てのマンションだった。直線距離にして2㌔と離れていない。夫の部屋は3階で、ドアの開閉を視認できるのは向かいにある小さな公園の片隅しかない。夫の休日、探偵は目立たぬよう息を凝らしてドアを注視する。女性の出入りがあるのか、すでに女性が部屋の中に居るのか。張り込みが4時間を経過した昼過ぎ、夫が1人で部屋を出た。最寄り駅とは反対方面に向かう。徒歩尾行の探偵とその後ろから、バイクを押しながら尾行する探偵が慎重に後をつける。行きついた先は20 分ほどの場所にある月極駐車場だった。そこに、妻から聞いていた夫の車が駐車されていた。
 車が出た。バイクが尾行する。幹線道路をショートカットして商店街の道路等を抜けていく。バイクはできるだけ姿をさらさぬよう、車のテールを追い続ける。そして20 分ほどの住宅街に停車した。すると、成人しているとは思えない女性が小走りで車に乗り込んだ。いわゆる「萌え系」といわれる女性だった。車は、高速道路を北上。尾行車両が追いついたのは高速道路のPA。これで、車とバイクの2 台態勢で尾行ができる。行きついた先は那須。所々に立ち寄り、夫は女性を写真に収める。日帰り温泉に立ち寄って月極駐車場に戻った。手をつなぎ夫が女性の荷物を持ち、2人はもつれ合うように夫のマンションに消えた。
 訴訟まで争う場合に備えて、部屋を出る映像を押さえ、加えて女性の素性を割り出さなければならない。長い張り込みになった。2人が入室してから、20時間が経過した午後4時過ぎ2人は出てきた。最寄り駅まで夫が送る。女性を尾行する。電車を乗り換え、住宅街の一軒家に帰った。後日の調査で、その女性は20 歳の女子大生であることが判明。妻は「萌え系」の女性と交際していたという趣味に茫然自失となった。
 
 *本文はいくつかの事例を基に構成されています。盗用・無断転用・無断転載を一切禁じます。


2020年5月11日月曜日

5月11日


お久しぶりです。

新型コロナウイルスの影響で街の様子も一変しました。

この状況下で自粛生活をしなければなりませんが、

もうしばらく・・ガマン😣

何事も前向きに考え、乗り切りましょう。

ご家庭内でのトラブルが増加しております。

お困りごとがございましたら

GK探偵事務所までお気軽にお問い合わせください。


アスポバックナンバーより~


「恩人探し…30 年来の想い」



 2カ月ほど前のこと。東海地方に住む40代後半の女性からの電話。「恩人を捜してほしい」とのこと。東京駅で落ち合い、詳しい話を聴く。その女性は、地元の高校を卒業後、都内で就職。就職先は社員30人ほどの金属加工会社。その会社は一族が経営しており、社長の決めたことに意見を言える人はいない。唯一、30年以上勤務している課長だけが社長と社員の緩衝材のような存在で、何とか人間関係は保たれていたという。

 依頼人は、事務職で採用されたはずが、繁忙期には現場での仕事にも駆り出された。残業手当など出たためしもない。ある日、社長から暴言を吐かれ、定規で頭を叩かれた。課長が愚痴に耳を傾けてくれた。それが救いだった。それから依頼人に対して、社長のあたりが厳しくなり、たまりかねた課長は社長をいさめた。その結果、課長は降格され給料も減らされるという事態に。依頼人は、私のせいで…と泣きながら頭を下げたが、気にしないでいいんだよと、優しくいたわってくれたという。それから5日後の朝礼の時、思いもしない出来事が。その課長の退職の挨拶だった。課長は会社を去った。課長には大学生の娘もいる。お金だって必要なはず。私をかばったために…と悩んだ。結局、2カ月後に、自分も退社して地元に帰った。一度だけおわびしようと勇気を出して電話をかけたが、奥さんが出て、思わず受話器を置いてしまったという。奥さんは私のことがきっかけで退職したことは知らないはずで、申し訳ない気持ちで話ができなかったと、依頼人の眼は潤んでいた。

 依頼人から、とにかくきちんとおわびしたいと、その思いが詰まった手紙を渡してほしいと託された。調査開始。その人は80歳に近い。手掛かりは、30年前の年賀状の家族の名前と公団住宅の住所、当時の電話番号、社員旅行時の写真。茨城県内の町の出身で6人兄弟の末っ子ということだけ。難しい調査になった。1カ月を過ぎたころ、やっと光が見えた。茨城に住む本人の甥と接触でき、埼玉県内に夫婦二人で住んでいることが判明した。しかし、依頼人に住所を教えるわけにはいかない。プライバシー保護のため必要なこと。依頼人に住所を教えてもいい場合は、本人の了解を得なければならない。いきなり訪問するわけにもいかない。本人の妻に誤解を受けないように細心の注意を払わなくてはならないからだ。

 本人が一人で出かける時に手紙を渡すことがベスト。張り込むこと2日目の朝。本人が犬の散歩に出た。公園で接触する。すぐに思い出してくれた。手紙を渡し、電話で話してくれるという。依頼人に電話をかけ本人に代わった。遠くから見守った。30分は話していただろう。にこやかな表情は仕事が成功したことを物語っていた。

 *本文はいくつかの事例を基に構成されています。盗用・無断転用・無断転載を一切禁じます。