Powered By Blogger

2021年4月26日月曜日

4月26日

 


探偵シリーズバックナンバーより

 

 63歳妻の決断離婚」

 

 63歳の妻が相談に来た。

 夫は県東にある社員80人の精密機械メーカーの2代目社長。 妻は三十数年前、まだ社員10人ほどしかいなかった先代の舅(しゅうと)が社長をしているときに嫁いだ。舅・姑(しゅうとめ)との同居に加えて、子供を背負いながら製作所の仕事もこなしてきた。地元でも信頼のある中堅企業として成長し、収入も格段に増えた。質素・倹約が信条だった舅が他界し夫が後を継いだ。その頃から何かが変わった。家を改築し別宅も新築、高級外車3台を保有するようになった。会合だと言って家にいる時間もない。何度か浮気している痕跡に気づいたが、子供たちと経済的には何不自由ない生活が送れるからと見て見ぬふりをしてきた。

 しかし、状況は一変する。3年前、姑が認知症を患い施設へ入所させたが、すべて妻任せで、夫は一度として施設へ顔を出したことはない。たまりかねてそのことを口にすると、信じられない言葉を浴びせてきた。「誰のおかげでいい暮らしができるんだ! ボケてる親に顔見せる必要

があるか! おまえが責任もって面倒見ろ!」。妻はこの言葉に凍りつく。そこには、若かりし日の夫の優しさはみじんもなく、ただの傲慢(ごうまん)な男に成り下がってしまったと。たとえ浮気していたとしても、家庭を第一に考え生活ができればと思っていたが、この先、もし自分も姑のようになってしまったらと思うとやり切れない。浮気の証拠をつかんで、財産分与・慰謝料を元手に残りの人生をやり直したいと。

 調査日の選定に入る。会社に掲示されている、某経営者の団体への出席という日が怪しい。新型コロナの影響でその会合は中止であるのに、夫はそれを隠しての出張だからだ。830分、夫がイタリア製のスポーツカーに乗り込む。そして高速道路に入り北へ向かう。一気にスビートをあげる。追跡車両はあっという間に引き離されるが、夫はスビート狂であると事前に情報を得ていたことから、1800ccのバイクを調達しておいたため見失うことはない。そして、F県のあるインターで降りコンビニへ。追跡車両も追いつきカメラを向けていると、夫の車の隣へ軽自動車が止まる。コンビニから出てきた夫が近づき女性が降りてきた。夫と同年代の女性であることが見て取れる。女性は夫の車に乗り込みラブホテルへ入り、約8時間を過ごしコンビニへ戻る。夫と別れた女性の車を追う。すると築20年程の一軒家に入った。

 後日の素性調査で、その女性は夫の中学のクラスメートであり、配偶者は3年前他界していたことが判明。10日に1回のペースで同じ行動をとっていた。報告の時、妻にはまったく悲壮感はなかった。

 (毎月第3週掲載)

 

 

2021年4月20日火曜日

4月20日

 


探偵シリーズバックナンバーより


「単身赴任先の真実」

 

 GKと懇意にしている元警察官からの相談。内容は30歳の次男のこと。次男は国内でも有数の建設会社の技術者として、栃木に妻と3歳の娘を残し福島県での大型プロジェクトのため単身赴任をして1年が過ぎた。その息子の嫁からある相談を受けたという。単身赴任当初は、毎週必ず帰省して月に2回は実家にも顔を出していたが、今年に入ってから仕事が忙しいからと多くても月1回しか帰省しない。どこか態度もよそよそしく妙な違和感があるし、実家に来ることを意図的に避けているような感じも受けるという。嫁ははっきりと口にしないまでも、遠回しに浮気を疑うような話をしてくる。本当に仕事が忙しくて帰省できないのか、浮気しているのか、真実を知ることが最優先と調査をすることに。

 息子が帰省し、福島へ戻るという日曜日の16時から、息子と嫁が暮らすアパートで張り込む。1620分、息子が出て来た。追跡車両2台で後を追う。調査車両のナビには、あらかじめ息子の暮らす単身アパートの住所を打ち込んである。そのルートから大きく道を外せば、アパート以外のどこかに行くという想定になるからだ。しかし、息子は一度高速のPAで休憩しただけでアパートへ帰宅し、鍵を開錠して明かりがともった。このアパートはドアを開けると左右どちらにも階段があるが、駐車場は左側で、右側は自転車置き場とごみ集積場でそこを過ぎると小路に出られる造りになっている。

 その小路へ1台の軽自動車が停車する。人が降りて来る様子はないが、室内灯がともった。女性がコンパクトを片手にルームミラーで化粧直しをしている様子が見て取れる。すると間もなく息子の部屋の明かりが消えてドアが開き、階段を急ぎ足で下りその軽自動車に乗り込んだ。そして、15分ほどの中華料理店に入る。それから1時間後に出て来た。アパートへ向かうと想定し、追跡車両の1台を先回りさせる。軽自動車はアパート近くの空き地に駐車して、二人で手をつなぎアパートへ消えた。翌朝7時過ぎ、息子は作業着で車に乗り込み出掛ける。女性はお昼近くになっても出て来ない。つまり女性一人が部屋にいるということに他ならない。昼を少しまわった頃、アパートのベランダに洗濯物を干す女性の姿があった…。

 その後の調査で、息子と女性は半同棲状態で、女性は息子の10歳年上、昨年末まで派遣社員として息子の会社で勤務していたことが判明。さらに女性は離婚歴があり、去年社会人になった息子がいて、自分の両親と暮らしていた。父親へ報告すると、とりあえず嫁には伝えずに、その女性の住む実家へいって、息子とは手を切るように説得すると事務所を後にした。

 (毎月第3週掲載)

2021年4月12日月曜日

4月12日

 


探偵シリーズバックナンバーより~

「あきれた妻のうらぎり」

 

 GKの創業以来懇意にしている弁護士からの相談。甥の妻が不倫している可能性が高いというもの。その弁護士と甥が連れ立って相談に来た。

 妻との間には3歳になる息子がいる。夫婦共働きで、夫はある工業団地で、妻は大手スーパーでそれぞれ正社員として働いている。ことの発端は、ささいなけんかだった。いつもはけんかしても2日もすれば自然ともとの関係に戻っていたのに、どうも今回ばかりは様子が違う。妻は夫の歩み寄りにかたくなな態度を崩さず、しびれをきらした夫が詰め寄ると「離婚したい。出て行ってほしい。実家に帰って」と。離婚届の用紙まで出してきた。結婚して6年。これまでにこんな妻の態度を目にしたことはなかった。息子の前で言い争いはしたくないと、夫はとりあえず家を出て友人宅に身を寄せた。

 しかし、なぜ妻が突然そういう態度になったのかまったく見当もつかない。妻の不在の日、家に入り年賀状と結婚式の座席表を照合して妻の職場の同僚の連絡先を3人メモした。その夜、その1人に連絡をとり事情を説明して何か知らないかと確認。すると、匿名を絶対的な条件として驚愕(きょうがく)の事実が伝えられた。妻は離婚歴のある一回り年上の男性と不倫していた。本人たちは気付かれていないと思っているが、歓送迎会の2次会の途中で2人がいなくなるなど、同僚のほとんどは気付いていたという。さらに、来週のシフトで同じ日に休みを取っていることを教えてくれた。

 夫には、信じられない告発だった。そして叔母である弁護士に相談した。「証拠を押さえ泣き寝入りはしない。真実と向き合う」と調査開始。妻とその男性が同じに休みを取っている日を調査日とした。午前7時50分、妻が息子を乗せて保育園へ。このまま出かけるのかと思いきや、一旦アパートへ戻り洗濯物を干すためベランダに顔を出す。張り込みしている探偵は妙な違和感を覚える。ベランダに出るドアを開放したまま中へ向かって話をしているようなのだ。するとあろうことか男性がベランダへ出て来て喫煙を始めたのである。夫からは妻には男の兄妹はいないと聞いている。昨夜から男はこのアパートに泊っていたことになる。夫を追い出してまだ1週間。大胆不敵な妻の行動には驚愕するしかなかった。それから2時間後妻と共に男は出て来た。妻の車で10分程度にある野球場の駐車場へ。男はそこに駐車してあった車に乗り換え妻と別れた。その後、男はパチンコ店に立ち寄り夕方に一軒家に帰宅した。後日の男の素性調査でそこは実家と判明。

 弁護士も夫もこの事実に怒りを通り越してあきれ果てたが、今後は徹底的に追及して社会的責任をとらせると事務所を後にした。

2021年4月5日月曜日

4月5日




探偵シリーズバックナンバーより~


328号「社長の決断社員の飲酒運転摘発」

 

 創業50年の造園会社の社長からの相談。この会社は隣県の造園業としては規模・社員数等トップにある。これはひとえに、この社長の人間力にあり社員はもちろんその家族にも気を配る人物で社長に対する信頼は厚い。この社長とは3年ほど前に、弁護士を通じて仕事をしたことがある。

 今度の相談は、社員の「飲酒運転」。先月、社長が出社すると一通の手紙が机に。匿名で、ある社員の飲酒運転を告発したもの。告発された社員は、50歳の営業責任者であり肩書は営業部長。その実績から役員に登用する矢先の出来事だった。20年前に地元の金融機関を退職して採用した人物で、顧客の評判も良くこれまでの新規開拓の実績も飛びぬけている。この社員には、会社名が入った営業車を与えてある。実は、社長の耳にはこれまでもそういう噂が何度か耳に入ったことがあった。もしこれが事実だとすると社名入りの車での飲酒運転で人身事故でも起こしたら、会社の信用はもちろん使用者責任として会社に及ぼす悪影響は計り知れない。愛する社員であるがゆえ、一度罰を受けて気持ちを入れ替えてもらうために、「飲酒運転を警察に告発して現行犯で検挙できないか?」というものだった。もちろん社長が絡んでいることは極秘中の極秘である。

 元警察官の探偵と策を練り、所轄の警察署へ相談に行く。案の定、色よい返事はもらえなかったが感触は悪くなかった。それから5日間仕事帰りから尾行するが、飲食店には立ち寄らず帰宅。そんな時、営業の飲み会への誘いが営業課長からあった。社長は不参加にしてその日をXデーとし再び警察署に情報を提供する。対象者は、会社のマーク入りの車を飲み会場所の付近のパーキングに止める。探偵2人を店に潜入させ実際にアルコールを摂取するのかどうか把握する。そこから「焼酎ロック2杯」などと外で張り込む探偵に逐一報告がある。この情報を警察署にあげる。午後11時に飲み会が終わり、代行車が何台か店の前に乗り付け散開となるが、本人は一人で店内に。それから15分。対象者はパーキングの精算をすると自らハンドルを握った。

 再び警察署に連絡する。ここで大きな問題が。その店から自宅までは3㌔しかない。警察が間に合うかどうかだ。帰宅して家の中に入られてしまうと検挙できない。残り1.5㌔、警察は間に合わない。赤信号で停車し瞬間に2台の車で挟み込み警察の到着を待つ。運転席に向かうと、警察と勘違いしたのか窓を開ける。強いアルコールの匂いが鼻につく。そのタイミングでパトカーが到着。飲酒運転での検挙になった。社長に報告。事故を起こされる前で本当に良かったと心から安堵していた。