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2021年2月24日水曜日

2月24日


 

探偵シリーズバックナンバーより~

「里帰りの真実…②

 

 夫のテールランプを追う。車は、住宅地の中の小さな公園の柵に寄せて停車した。公園から道路を照らすはずの街灯が寿命なのか、点滅を繰り返している。その点滅が辛うじて運転席の夫の姿を浮かび上がらせる。探偵のひとりは、公園の植え込みの中へ身を潜め、車のドアの開閉を見逃さない位置で張り込む。近年このような分譲地は防犯意識が高く、不審なことがあるとすぐ通報されてしまう。調査対象者だけではなく、犬の散歩などをしている付近住人にも、ことさら神経を使わなければならない。

 動かないこと40分。そろそろ張り込み位置を変えないとまずいと思った時、夫が車から降りた。車でここに移動するまでは、まったく夫は警戒の目を向けてくることはなかった。しかし、車を降りると、夫は用心深くあたりに目を向けてきた。

 夫は5軒ほど軒を連ねる道に入った。3軒目付近の家を通り過ぎる時、一瞬顔を向けたが通り過ぎ、そのまま奥までいくかと思いきや、Uターンして背中を丸めるように3軒目の家に入った。夫は警戒しているつもりだろうが、探偵たちからすれば、かえって怪しい行動だと失笑しか誘わない。約2時間後夫は人目を忍ぶように出てきた。

 翌朝、この家を内偵する。ランドセルの女の子が出てきた後に、女性が下の子を連れて幼稚園バスまで送りに行った。その後一週間にわたりその家の付近で張り込みを続けたところ、3回同じようなパターンで夫はその家に足を運んだのである。後日の素性調査で、その家の女性の夫は単身で中国にいることが判明。いわばダブル不倫ということだ。依頼人に報告。妻は淡々としている。むしろ動揺しているのは、「何もない」と決めつけていた妻の両親のほうだ。

 妻は、離婚するつもりは毛頭ないという。事を大げさにするつもりはないので、女性から「黙って身を引いてもらえるよう警告と、直接手紙を渡してほしい」と託された。後日、幼稚園バスに子供を乗せたあと、家に入る寸前で、GKの女性スタッフ2名が女性に接触し警告とともに、妻からの手紙を渡した。夫とこの女性の出会った背景は、レアなケースであり、プライバシーに配慮して紙面では公開できない。

 *本文は依頼人の了承を得てプライバシーに配慮しています。写真はイメージです。文章とは関係ありません。

2021年2月22日月曜日

2月22日

 


探偵シリーズバックナンバーより~


「里帰りの真実…①

 

 両親とともにGKを訪れた30代前半の妻。妻は妊娠6カ月。初めての子を宿している。見た目に悲壮感はない。適切な化粧を施し、衣服にも気を配り、好感の抱かれる容姿と言葉遣いが備わっている。

 夫は、7歳年下で、一流企業の会社員。妻も、結婚するまで同じ会社に勤めていた。会社のイベントで意気投合し1年の交際を経て結婚したという。夫は、この猛暑に体調を崩してはいけないと、妻に宇都宮の里帰りを勧め、生活をしている東海地方のマンションから実家のある宇都宮に戻ってきた。

 実のところ、妻は、懐妊してからの夫の変化に妙な違和感を感じていた。それは、ひとりになることが何よりも嫌だった甘えの強かった夫が、しきりに里帰りを勧めたことや、元来、身なりにはまったく執着しないはずの夫が、下着にまでことさら気を使うようになったことなどだ。

 妻は、そのことを両親に話しても、「気にしすぎだ」と一蹴(いっしゅう)されたが、結局両親は、「イラつくのは胎児によくない」と、「調査をして気が済むなら」との思いで費用を負担し調査することにした。

 探偵たちは東海地方に飛んだ。GK探偵塾の卒業生の中で、地元に住む卒塾生を調査に帯同させ、バイクを調達する。調査成功の鍵を握るのはやはり地元をよく知る人間の「地の利」だからだ。

 夫の退社時刻から調査をすることにした。2日間調査しても、コンビニに寄るだけで10時には帰宅した。しかし、3日目、小走りで車に向かい、どこへも寄らずに帰宅した。気持ちがはやっていて、どこか浮ついている様子が手に取るようにわかる。「必ず動く!」という確信は、経験の深い探偵なら一目瞭然(りょうぜん)。向かいのマンション3階の踊り場からドアを注視している。一瞬たりとも目を離せない。調査車両もエンジンを停止し、暗闇のなかで息を殺す。湿気と異常な暑さが探偵たちを襲い、神経をいら立たせる。

 …すると30分後、夫が出た。私服に着替えた夫は、小走りで車に乗り込んだ。大きな通りに出るまでは、追跡する調査車両のヘッドライトを消したまま慎重に尾行する。夫の車は、市街地を抜けてから、郊外の小さな住宅地に入った

 (次回につづく)

2021年2月15日月曜日

2月15日



探偵シリーズバックナンバーより~

「福島レスキュー」

  2011年3月20日午前2時。GK探偵事務所USA支部から連絡があった。内容は、「福島市に住む両親を、妻の待つ東京まで連れてきてほしい」という依頼だという。

 依頼人は、商社マンで、ニューヨークに赴任しており、父親(73歳)と母親(72歳)が福島市内で二人きりで生活をしている。母親は、右足に障害を患っており、歩行もままならない。震災から、6日後、ようやく両親との連絡がとれて無事は確認しものの、断水が続いているという。

 最初、両親は、息子夫婦に迷惑をかけまいと、平然を装った。しかし、明らかに動揺している様子を、息子が気づかないわけがない。息子の切なる願いを受け入れたい。しかし、ガソリンの問題がある。宇都宮~両親の自宅までは往復360㎞だが、震災の影響によっては、大きく迂回(うかい)しなくてはならないことも念頭に置かなければならない。

 そこで、タクシーを利用して、復旧した那須塩原駅まで来て、新幹線を利用した方がとの提案を試みる。しかし、依頼人の条件は、「身辺警護(ボディーガード)」の国家資格を有する人間2名で対応してほしいとの要望だった。日本においては、まだまだ認知されていないが、アメリカでは、身辺警護という職業はごく一般的ものである。アメリカナイズされた息子の危機管理意識が、そうさせたのだろう。GK宇都宮は「身辺警護」の資格を有している。しかし問題は、ガソリンだ。夜中にもかかわらず、どこのガソリンスタンドにも長蛇の列ができている。いつ給油できるかもわからない。そこで、2台で出発して、1台は福島県内のコンビニに車を置いて、場合によっては、車をリレーして輸送する策をとる。

 非常時に備え、食料を調達し、午前3時に出発。矢吹町に入ったところで、国道沿いのコンビニに事情を説明して車を1台置かせてもらい北に進む。国道は、ところどころが隆起しひび割れがあるものの、迂回せずになんとか5時間をかけて到着することができた。そして、両親と対面。息子の気遣いに嬉(うれ)しかったのと相まって、ほっとしたのだろう、目を潤ませ、何度も手を握しめられた。荷物を運びいれ、母親を背負い車に乗り込んだ。幸い、車をリレーすることもなく那須塩原駅に到着した。ひとりが母親を背負い、ひとりが荷物を持ち、新幹線に乗車する。老夫婦は、座席で手を繋いだまま、すぐに眠りについた。

 そして、東京駅に隣接するホテルのロビーで、息子の嫁と孫との対面を果たす。そこに家族の絆を見た。自分も、無性に両親の顔が見たくなった…。

 *本文は依頼人の了承を得てプライバシーに配慮しています。

 

2021年2月12日金曜日

2月12日

 


~アスポ探偵シリーズより~

2011.1.26「老いらくの不倫妻の浮気、夫の苦悩

 

 男の警戒度合いは、相当なものだと感じた。コンビニに立ち寄り、雑誌コーナーで立ち読みするふりをして外に警戒の目を向けてくる。一方、妻の車は、郊外のショッピングモールの駐車場に停車するかと思いきや、スルーして結局は北関東道にのった。妻の車が行きついた先は、あるパーキング。必ずや、二人は逢うと探偵の勘が告げている。警戒をしているということは、裏を返せば、必ず逢うということになるからだ。

 男の車もコンビニを出て、予想通り、同じパーキングへ。妻は、売店から離れたところに車を駐車して、トイレに向かう。男は、トイレの正面に車をつけた。トイレから出てきた妻は、満面の笑みで、男の車に乗り込んだ。警戒の色はみじんもなくなっていた。二人で打ち合わせしたとおりのシナリオで、ここまで警戒したし、70歳の夫が、まさか、プロに依頼したとは考えてもいない。もう安心だとたかをくくっているのだろう。しかし、プロから見れば、これは、ドラマに出てくるような、「尾行を撒(ま)くためのまね事」でしかない。警戒の緊張感を解いた段階で、勝負はついてしまう。

 その後、二人は、県東にある日帰り温泉へ向かった。カップルを装った探偵二人が、ぴったりマークする。すると二人は、フロントで、部屋休憩2時間というプランを告げた。探偵もそれにならい同じプランで潜入する。探偵たちは、運良く隣の部屋をキープできた。部屋の造りは、一応個室にはなっているものの、部屋を仕切る壁の上が、木材の格子、欄間のような構造になっており、二人の会話は筒抜けになる。その会話は、夫に対する罵詈(ばり)雑言。夫をののしり、ばかにしている。部屋に集結した探偵たちも、自分たちの親、祖父母と年齢のかわらない二人の会話に、胸が痛くなる。ラブホテルでの仕事のほうがよほど救われると思いやられるぐらいまでに、ひどい会話が続く。

 そして…。探偵たちは、紙面ではとても表現ができないほどの憤りを感じる時間を費やさなければならなかった。真実を伝えるのが使命、しかし夫の気持ちを思うとやりきれない。老いらくの不倫という現実。仕事のむごさを思い知らされた。私たちのできることは、夫を徹底的にフォローしていくこと。それしかできない。

 (前回147号は、ホームページに掲載してあります)

 *本文は依頼人の了承を得てプライバシーに配慮しています。写真はイメージです。文章とは関係ありません。

2021年2月8日月曜日

2月8日

 


アスポ探偵シリーズより~

「老いらくの不倫妻の浮気、夫の苦悩

 

 【近年、妻の浮気の相談に来る夫の数が増えている。一昔前は、浮気というと、夫と相場が決まっていた…】70歳の夫が相談に来た。背を丸めた小さな体に、気の弱そうな顔つきから、聞き取れないほどの声で口を開く。妻は65歳、ホテル客室の清掃のバイトをしている。

 一方、夫は、名のある会社を定年まで勤め上げた技術者で、退職後は、体調を崩し家にいる。妻の浮気の疑惑は、妻の友人からの告発だった。妻と仲たがいしたのがきっかけだった。「○○工業という会社を営んでいる、65歳の男と浮気している。男の妻は5年前に亡くなっている」というもの。夫には、まるで青天の霹靂(へきれき)。確かに、ここ数年来、夫婦仲はよくない。特に、夫が定年退職をしてからというもの、どんよりした空気が蔓延(まんえん)してきた。妻は、食事は用意するものの、一緒の食卓では食べない。二人で出かけるようなこともない。当然のごとく、夫婦仲が悪い家には、子供たち夫婦、孫も寄り付こうとしない。夫は、告発を受けてから眠れない日々が続く。気の強い妻には真偽を確かめるすべもない。まさかこの年になってこんな思いをしようとは。眼鏡がみるみるうちに曇っていく。

 その不安は次第に、妻の勤務先や、男の家の近くを徘徊(はいかい)するようになっていった。そして、夫が目にした男は、体も大きく、こわもてで一見堅気には見えない。自分と正反対の風貌に、悔しさとコンプレックスが襲いかかる。病的なほど毎日徘徊してしまう。しかし、その行動をあざ笑うかのごとく、徘徊しているところを撮影され、慌てて逃げ帰ってくる始末。ばかにされている。今更妻を愛しているというものではない。ただ、70歳でも、最低限の男の矜持(きょうじ)は持っていることをわからせたい。

 調査開始。妻と男の両方を張り込む。二人は、同時刻に家を出た。妻の向かった先は、郊外のショッピングモール。しかし男は、反対の方向へ車を走らせる。環状線を時速40㌔で遅走したり、わき道に逸れたと思うと、車を停車させる。そしてUターン。これは明らかに、警戒している者の行動だ。夫が何度も尾行に失敗したことが要因だろう。難しい尾行になる。しかし夫の矜持を守るため、失敗は許されない

 (次回に続く)

 *本文は依頼人の了承を得てプライバシーに配慮しています。写真はイメージです。文章とは関係ありません。

2021年2月5日金曜日

2月5日


 

探偵シリーズバックナンバーより~

 「『嫁の悪態・浮気』母親の悲痛な叫び

 

 3カ月前に見つけた妻と男の写真つきメール。ホテル内で撮影されたもの。しかも男は上半身裸で妻はシーツのようなもので隠してはいるが、互いに裸であることが分かる。厳格な父親が他界してから変貌した妻。朝方まで帰宅しない日も増えていく。母親にもつらくあたるようになった。そんな中、母親の体にガンが見つかり、告知を受けた…。(前回より)

 全貌が知りたいと、夫が夜勤の日を連続して調査する。調査初日からひとつの結果が出た。午後6時、夫が仕事に出かけると間もなく、妻の車が動く。高速道路で南に向かい、一つ先のインターで下りると、すぐそばのホテルへと入った。誰も拾わなかったが、その訳を探偵は知っていた。このホテルは、一部屋に車が2台駐車できる造りになっていて、別々の車でホテルで落ち合うパターンであることを。

 妻の車はゆっくりとホテル内を回り、白のセダンの隣に駐車する。尾行する探偵は妻がホテル内のエレベーターに乗る姿をとらえた。しかし、一人でホテルに入っても、これだけでは不貞行為の証拠にはならない。2人が出てきて車へ互いに乗り込む姿を抑えるしかない。

 しかし、駐車場の前は、車で待機できるほどのスペースもない。ただ1カ所だけその場所は存在した。それは、駐車場正面の塀のわずかな隙間だった。いつ姿を現すか分からない相手に、身じろぎもせずにビデオを構える。なんとしても依頼人とガンを患う母親のために証拠を抑えたい。その思いだけで底冷えする寒さをひたすら耐えた。

 それから4時間、2人は出てきた。駐車場内の明かりに照らされた抱擁する鮮明な顔が見える。しかし、その男は白髪の紳士然とする男性で、写真つきメールの男とは違っていた。調査4 日目、再び妻が動いた。家を出た車は、大型ショッピングモールの映画館付近に車を止め、店内に入ると男性と落ち合った。これも、写真つきメールの男ではない。明らかに年下と分かる男だった。人目もはばからず腕を絡ませ男性の横顔を見る仕草に、妻のほうが熱をあげている様子が手に取るように分かる。その後、予想に反してホテルには行くことなく別れた。

 その後の継続調査で、白髪の男性とは週1回ホテルで落ち合い、年下の男性とは週2回会い、1回はホテルというパターンであることが判明。すべての証拠を取り終え、男たちの素性も調べ上げた。白髪の男性は、妻が以前パート勤めをしていたときの上司であり、年下の男性は隣県に住む営業マンだった。

 最後まで、写真つきメールの男が姿を現すことはなかった。うまく男を使い分け情事にふける妻、その証拠に弁解の余地はなかった…。妻は大きなものを失った。

 (前回はホームページをご覧ください)

 *本文は依頼人の了承を得てプライバシーに配慮しています。盗用・無断転用・無断転載を一切禁じます。

 

 

2021年2月1日月曜日

2月1日

 

探偵シリーズバックナンバーより~


『嫁の悪態・浮気』母親の悲痛な叫び

 

 弁護士に伴われて相談に来た35歳の夫。弁護士とは姻戚関係にある。夫は見るからに憔悴(しょうすい)しており、顔を上げることもままならない。相談のあらましは付き添ってきた弁護士から説明を受けた。

 きっかけは、3カ月前に見つけた、妻と男の写真つきメール。ホテル内で写されていることは明らかなもの。妻の入浴中に見てしまった。男は上半身裸で妻はシーツのようなもので隠してはいるが、その下にはなにも身に着けていないことが分かる。夫は凍りついた。

 夫は、穏やかさが服を着て歩いているような男で、争い事とは無縁で生きてきた。妻に追及する勇気は持ち合わせていない。夫30歳、妻26歳の時に結婚した。妻には4歳になる女の連れ子がいた。夫の家は代々続く大きな農家で、夫の代から兼業農家となった。妻は父親を知らない。母は、妻が高校に入学すると同時期に、再婚して継父と同居するようになった。母の留守に継父から関係を迫られた。妻は家を出て、高校を中退し年齢を偽り水商売の道に入った。それから、母親と同じように未婚の母になり、働いていたスナックに来たのが夫だった。

 夫は妻の生い立ちと苦労話に涙し、同情から始まった出会いは次第に愛情へと変わっていったと振り返る。夫の家は、父親がとにかく厳格で厳しかったが、男気がある人物だったこともあり、その境遇に同情し結婚を認めた。一方母親は、女性ならではの感性で、この結婚には嫌な予感がしていたという。

 妻の生活行動に変化が見えたのは、父親が他界して半年を過ぎたあたりからだという。厳格な父親がいなくなってからというもの、姑(しゅうとめ)と夫の人の良さを見下し、手のひらを返したような態度が出てきた。勝手に外出するようになり、朝方まで帰宅しない日もあった。夫が夜勤のときも、姑がいるのをいいことに、断りもせずに、娘を置いて出かけてしまう。

 元来から、父親の絶対的な威厳のもとに規律があり家庭が保持されていた家が変わった。妻はせきを切ったように変わっていった。いや、変わったというより、本性が出たという方が正しいのか。見かねた姑も諭してはみるが、まったく聞く耳を持たない。父親が他界してこんなにも変わるものなのかと精神的に疲弊していく。それどころか、母の体にガンも見つかった。母親は自分でも告知を受けた。こんな状況でも、妻はまったく意に反さない。反省するどころか、姑への悪態も度が増してきた。家の行く末が心配でならない。そして、決断した。素行調査をすることを…。妻の本性が暴かれていく。あまりにもむごい現実がそこにはあった…。

 (次回に続く)