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2020年12月25日金曜日

12月25日

 


探偵シリーズバックナンバーより~

 

「不倫・結婚・不倫・離婚…①

 

 隣県から相談に来た30歳の妻。両親と幼子を連れ立ってきた。子供の無邪気な笑顔とは対照的に重苦しい空気が事務所に漂う。父親は怒りを自分が全て吸収したような険しい顔つきをしている。母親は子供をあやし、娘はただひたすら俯(うつむ)いたまま。ようやく重い口を開いたのは、父親だった。次第に事の顛末(てんまつ)が見えてきた。

 夫は国家公務員で一回り年上。ことの発端は、4カ月前、送付されてきたクレジット明細書。無意識のうちに中身を見てしまった。

 そこには、勤務していた平日なのに、最寄りのICから那須ICのETCの利用明細が載っていた。夫の勤務形態上、他県に、それも自家用車で出張することなどありえない。さらに、同じ日の那須のレストランの利用明細もあった。このレストランは、交際していた時、よく連れて行ってもらった場所。我慢できずに、それらを問い詰めた。すると、夫は豹変した。

 夫婦間にもプライバシーがある…等、論点をすり替え怒鳴り散らしたあげく、家を出て行ってしまった。それから戻ることはなかった。妻は、自分を責めた。その理由は5年前に遡(さかのぼ)る。夫の勤務先に派遣で3カ月間勤めていたときに、恋に落ちた。妻子あることを知っていたのに、その優しさに抗(あらが)えず、深い関係になった。

 身を引かなくてはいけないとの想いとは裏腹に、関係は半年続いた。土日は逢えない。電話をすることもできない。少しでも楽になりたい、土日の空白を埋めたいと友達の紹介で無理やり彼氏を作って、忘れようともした。でも、楽になるどころか、反対に夫の良さを思い知らされるだけ。想いは留まるところをしらず増幅していった。結局、それから半年が過ぎた。すると、思いもよらないことが起こった。離婚するなど一度も口にもしなかった夫が、離婚したから、一緒になろうと言ってきた。

 そして1年が過ぎ、両親に打ち明けた。こんなにも恐ろしい父親の形相は見た事がなかった。「妻子を平気で捨てるような男に娘はやれない」と一刀両断。結局家を出て同棲し子供ができて婚姻届を出した。

 それから3年、今回の事が起きた。父親の怒りの根源がわかった。しかし、子供たちに罪はないと、夫婦の関係を修復すべく調停を申し立てた。しかし、調停は、予期しない方向へと進んだ。夫は帰ってくるどころか、妻の「非」を作り上げた。

 夫の社会的信用のある立場と饒舌(じょうぜつ)さに調停員は夫の味方になった。口下手な妻の訴えは最後まで聴きいれてはもらえない。しかし、「真実を知ること」という肝心なことを見落としていたことに気付く。それは、夫の女性関係を暴くことだった…。

 (次回に続く)

 *本文は依頼人の了承を得てプライバシーに配慮しています。

 

2020年12月23日水曜日

12月23日

 


探偵シリーズバックナンバーより~

 

「不倫の代償~ストーカー

 

 大手金融機関の管理職にある妻。2年前の夫の浮気に自分もというような気持ちで中学の同級生と深い関係になった。しかし、心が晴れることもなく仕事に傾注し逢瀬の回数が減っていく。しかし、男は違った。新しい男ができたと妄想・嫉妬し、付きまとい行為は次第にエスカレートしていく…。(前回より)

 警察に相談しようとも考えたが、不倫関係がばれたらと思うと踏み出せない。それを見透かしたように男の執拗さは度を増していった。携帯電話を着信拒否にして、メールアドレスを変えると、会社に手紙が届く。手紙には脅迫めいた内容は書かれてなく、警察沙汰になっても問題ないような巧妙な書き方をしている。そして、着信拒否をしないこと、新しいメールアドレスを教えること、行動スケジュールを教えることを暗に強要された。しかし、行動スケジュールを教えたことが後の恐怖につながっていく。

 妻が歓送迎会に出席していた店の向かいの路上に彼の車があったり、都内へ出張するとき、何食わぬ顔で同じ新幹線に乗っていたりと、付きまとい行為はエスカレートしていった。作戦立案。妻の身辺警護とともに、ストーカー行為の証拠保全と、効果的な抑止力として、男の人間関係を調べあげ、キーマンとなる人物を特定することだ。その人物は元上司で現在は他部署の管理職を務めている人物だった。

 男をマークする。妻の車が見える位置で駐車する。妻は勤務を終え駐車場へ向かい車に乗る。あらかじめ妻の後部座席にスタッフが身を隠している。運転席の妻に走行ルートを指示する。あえて自宅とは違う方向へ走らせる。そして、4日間、妻が自宅へ帰るまで執拗なまでの尾行を続け、その一部始終を撮影した。

 決定的なことは、妻の車をスーパーの駐車場に駐車させたとき、スタッフが身を隠していたことも尾行していたことも知らない男は、妻の運転席に猛然とかけより罵声を浴びせドアノブに手をかけた瞬間、男を取り囲み、すぐさまキーマンである元上司を呼び出し立ち会いを求めた。実は、既に全面協力を取り付けていたのだ。誓約書‥謝罪…。ひととおりの解決をみた。しかし、不倫の代償としてあまりにも大きな恐怖だった。妻はただうつむいていた…。

 ◆GK探偵事務所の特徴

 厳しいとされる警備業(身辺警護)の公安委員会の認定を受けている、県内唯一の探偵事務所です。この認可があることで、ストーカーの証拠収集と身辺警護の両方を同時に実施できます。ストーカー対策は、法律上認められたプロフェッショナルにだけ認められている業務です。

 (前回はホームページをご覧ください)

 *本文は依頼人の了承を得てプライバシーに配慮しています。盗用・無断転用・無断転載を一切禁じます。

 

2020年12月18日金曜日

12月18日

 


探偵シリーズバックナンバーより~

 

「不倫の代償~ストーカー

 

 依頼人は48歳の妻。不倫相手からストーカー行為を受けているとの相談。証拠というものを持参してきた。紫色に変色した二の腕の写真や会うことを強制・強要しているメール。依頼人は総合職として大手金融機関で管理職として働いている。

 実は、これが2度目の依頼で、2年前、夫の浮気調査をしたことがある。結果は、勤務する会社の契約社員と関係を持っていた。しかし、結果を報告してもなぜか不思議と落胆はしなかった。それは、家庭を壊すような浮気でなければよかったからだ。嫉妬しているわけでもなく、仕事も順調で経済的にも恵まれている。一人息子は昨年、国立の一流大学に入学できた。

 好きな仕事にまい進してきた人生。その努力は実を結び、責任のある立場にも抜てきされた。夫婦は既に家族であり、男と女としての情熱は家族の歴史と共に消滅していると語る妻の冷めた言葉が印象深い。ただ、言いようのないむなしさに包まれたと振り返る。

 息子の教育と仕事だけにアクセルを踏み続けてきた。そして、いつしか「女性」というものを置き去りにしてきたと。夫も浮気していたし、私だってというような気持ちがあったと、どこかで自分の不倫を肯定している妻がいた。

 ストーカーに変貌した彼は中学の同級生だった。半年に1回飲み会を10数年続けている仲間の一人だった。男性として意識する相手ではなかったが、2年前の夫の浮気を知り、その事実を打ち明けた時、真剣なまなざしで受け止めてくれた。それから2人だけで会うようになり、深い関係になるには時間はかからなかった。

 ただ、初めての刺激的な不倫のはずなのに、不思議なほどさめていたという。後悔もしなかった半面、夢中になることもなかった。頭を占めているのは、仕事の業績をあげることしかなかった。しかし、彼はそうではなかった。公務員で残業も多くはない。

 最初は、月に3回程度の逢瀬だったが、それが次第に2回になり1回になっていく。時には、仕事のためドタキャンもあった。彼は怒ることもなく、「仕事優先でいいんだよ」と理解してくれたし、自分と同じぐらいの感覚だと勝手に思い込んでいた。しかし、彼は次第に変豹していく。約束の時間以外にメールしてきたり、帰宅途中によく立ち寄るコンビニで、偶然を装い姿を現し甘えた声で関係を迫ってきたり…。そんな彼に幻滅し、関係を絶ちたいと告げると、ついに男は豹変した。それまでの優しいまなざしは狂気に満ちた眼に変わり、優しい語り口は怒気を含んだ脅しに変わった。ここからさらにすさまじいストーカー行為がはじまっていく…。

 (次回に続く)

 *本文は依頼人の了承を得てプライバシーに配慮しています。盗用・無断転用・無断転載を一切禁じます。

 

2020年12月8日火曜日

12月8日

 

こんにちは(*^_^*)

先日、TSR情報誌に掲載されました。

寺子屋いっぽ様 ありがとうございました。



探偵シリーズバックナンバーより~

 

「定年後妻の覚悟

 

 定年退職後、家にいることで夫婦間の距離が近くなり過ぎ、夫は妻を家政婦のように扱い、自分は自由を謳歌(おうか)しているのに、妻の外出には口うるさい。そんな時、夫が10歳下の教え子と浮気をしていると夫の友人から告発があった。この先のことを考えると暗たんたる気持ちになる。証拠をとって闘い抜く。残り多くない人生の自由を手に入れるために。(前回より)

 夫がカメラ仲間たちと熱海に出かけるという日を調査日とした。10時、妻が仕事に出かけてから1時間後、家の前にタクシーが横付けされ、向かった先はJR宇都宮駅。新幹線ホームでの待ち合わせもなく、そのまま乗車する。座席付近にも女性の姿は確認できない

 熱海に行く確証はあった。それは、妻が前日の夜、夫のボストンバッグに忍ばせてあった、旅行会社のチケットを目にした。そこには、ホテル名と人数(2名)が印字されていた。妻はそのやり場のない怒りに、チケットを破り捨ててやるという激情が襲ったと涙ながらに訴えてきた。しかし、証拠をつかむためと踏みとどまり、ボストンバックに戻した…。

 その情報を生かし調査に万全の態勢を期すため、同じホテルを予約し、調査員1人を熱海に先回りさせた。これで、調査員がホテル内の出入り口を含めた構造や、撮影場所の選定などの下見調査を円滑に実施できる。加えて、備え付けの浴衣等に着替えることで、不審がられるリスクを回避することができるし、夫たちの部屋の割り出しが容易になる。

 結局、夫は一人で新幹線に乗車し東京駅に降り立った。すると、その視線は隣の車両から降り立ち手を振る女性に向けられた。つまり、警戒したのか車両を別々にしたということだ。

 その女性は、背は小さく小太りで化粧映えもしない、妻のたたずまいとはまるで正反対の女性だった…。二人は仲むつまじい夫婦きどりで熱海駅に降り立った。ホテルの送迎バスに乗り込みフロントへ。調査員は、二人の手荷物を持つ従業員とともにエレベーターに同乗する。不審の目を向けてくることはない。そして、調査員は部屋を特定した。

 その後二人は、浴衣に着替えホテルの周りを散策し浴場、夕飯会場へ向かった。満面の笑みで夕食を囲む。そして、ホテルの外から、二人の部屋の明かりが消えるまで映像を撮り続ける。海を一望するホテルの部屋のカーテンは閉じられることが少ない。これらすべての映像一つ一つが証拠として積みあがっていく。後日、証拠を手に依頼人を伴い弁護士事務所に向かった。

 「依頼人の痛みを自分の痛みに置き換える想像力こそ、真の探偵の重要な素地なのです」と駒木代表取締役。

 (前回はホームページをご覧ください)

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2020年12月2日水曜日

12月2日

 

探偵シリーズバックナンバーより~

「定年後妻の覚悟

 

 定年後の熟年夫婦の浮気の相談が増えている。特に、子どもや孫が同居していない夫婦は、二人きりの時間が増えることで、夫婦間の距離感が近くなり過ぎ、少しずつ重苦しい空気がまん延してくる。そして、無遠慮にぶつけられる態度や言葉に亀裂が生まれてくる…。

 60代半ばの妻が相談に来た。白髪で凛(りん)としたたたずまい。その上品な身なりと、銀縁の眼鏡が知的な雰囲気を醸し出す。「不倫の証拠をとってきちんと離婚したい。残り多くない人生、浮気を何年もの間続けてきた夫に見切りをつけて、自由に生きたい」と、すでに覚悟を決めてきたような力強い口調で、そのいきさつを語った。

 同い年で夫婦共々教育者だった。お互いに上位の役職で定年を迎えた。夫は、それから働かなかった。妻も最初の1年は家にいたが、口うるさくなる夫に辟易(へきえき)して、ボランティアの団体に所属、外国人相手に日本語と日本文化を教える立場についた。妻が夫の浮気を知ったのは、夫の友人からの告発だった。

 「現在50歳になる、○○という昔の教え子とここ10年来浮気をしている。その女性は離婚していて、経済的な面でも面倒をみている」というもので、住所と名前までも教えてくれた。たしかに、夫の預金通帳を目にすると、まとまったお金が何度も引き出されていたのは知っていた。しかし結婚から40年近く給与は別々に管理していたので無頓着な面もあったと振り返る。

 ここ数年来、特に定年退職後は急激に夫婦仲が冷えていった。家政婦のように扱う夫の態度に嫌気がさしてきた。自分は自由に外出するのに、妻の外出は異常なまでに追及してくる。妻は、告発を受けてから眠れない日々が続いた。それは、夫を愛しているということではなく、まったく別の感情のおもむきだった。つまるところ、今はまだ健康でも、いずれどちらかが床に伏せる時がくる。介護をすることになっても、受けることになってもと考えるだけでもやりきれないという感情と不安。まさかこの年になってこんな思いをしようとはと顔を伏せる。

 女性に対しては、嫉妬ではなく、あるのはプライドだけ。とにかくどんな女性なのかが、気になって仕方がない。次第にその思いは何かの怨念のような呪縛となり、女性宅を何度も見に行ってしまう自分がいた。ふと我に返ると、教育者としての地位も信用も築きあげてきたという自負もあるのに、そんな自分の行動に、自己嫌悪が身を包む。このままでは精神的に崩壊してしまう。そんな自分と決別したい…。もう悔いはない。証拠をとって闘い抜く…。残り多くない人生の自由を手に入れるために…。

 (次回に続く) 

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2020年11月24日火曜日

11月24日

 


探偵シリーズバックナンバーより~

 

「同情に始まり暴力という恐怖に支配された妻…②

 

 夫が深夜に帰宅し目を覚ます。夫が入浴する様子をうかがいリビングに向かった。その時、無造作にテーブルに置かれた夫の携帯にメールが…。妻は、葛藤しながらもメールを開けてしまった。送信者欄には記憶の片隅に引っかかる名前があった。

 メールには、「今日も楽しかったね! チュッ」と書かれていた。頭が真っ白になる…。我慢できなかった。夫を追及すると阿修羅のようになった。サイドボードに立てかけてあった家族の写真を床に投げつけ、髪をつかまれ引き倒された。物音に気付いた3歳の娘が降りてきて惨状に大声で泣く。しかし夫の怒りは収まらない。何度も何度も謝ってようやくことが収まった。

 翌朝、何事もなかったようないつもどおりの夫がいた。メールを見たのがいけなかったのだと自分を責め立てた。いったん身についてしまったDVによる恐怖の支配。それから夫は優位的な立場になり、完全な序列が敷かれた。夫は次第に自由気ままになっていく。恐怖に支配された妻は夫の顔色をうかがう生活になる。

 そんな生活が3カ月ほど続いたが、家計を管理する妻は、通帳からいつもより多額の金額がクレジット会社から引かれていることに目を止めた。「女に使っているのか?」。勇気をだして、両親に事の顛末(てんまつ)を話す。両親は、自分の娘に暴力を振るった夫を許せないと激怒し、弁護士に相談した。「泣き寝入りをしてはいけない」というアドバイスに、調査をすることに。

 調査開始。結果は初日から出た。仕事が終わった夫を尾行する。夫は正々堂々と、住宅地の一軒家の前に車を付ける。ほどなくして派手な化粧をした30代半ばの女性が助手席に乗り込みコンビニへ。人目をはばかるどころか、無邪気にじゃれ合いながら酒などを買い込み、なんの警戒心も抱かぬままホテルに。後日女性の素性調査をしたところ、先妻との離婚原因になった女性だった。メールの送信欄の名前にどことない記憶があったのは、そのためだったのだ

 後日報告。妻は、しばらく様子をみたい、女と別れたら、また平穏無事な生活に戻れるからと言った。両親は許したくはなかった。しかし、娘が懇願する様子を目の当たりにして、一つの条件を出した。それは、両親がその女性に会って話すことだった。我々はボディーガードとして両親に付き添い、女性と対峙した。

 その女性の態度は、謝罪するどころか、「慰謝料払えばいいんでしょ。でも金ないし。あははは。別れるつもりはないから」と席を立った。愚弄(ぐろう)する態度に両親はただあぜんとするばかり。現在、妻は子どもたちと実家に身を寄せ、その女性に対して弁護士を立て慰謝料(損害賠償)を請求している…。

 (前回はホームページをご覧ください)

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2020年11月20日金曜日

11月20日

 


探偵シリーズバックナンバーより~

 

 「同情に始まり暴力という恐怖に支配された妻…①

 

 弁護士事務所からの紹介でGKを訪れた20代後半の妻とその両親。3歳と1歳の子がいる。夫は、ひと回り年上のディーラーの営業マン。見かけも、人当たりもよく、営業成績もトップクラスで上司の評判も高いが、私生活は荒れていた。離婚歴もある。結婚するまで、彼女(妻)は、彼(夫)と同じ職場だった。その当時、自分の顧客の女性と不倫していたことは社内に知れ渡っており、その不倫関係が発端となって、先妻と離婚した。

 当時、彼女は彼の営業補助的な仕事をしていたので、彼の顧客や行動範囲などもある程度把握していた。もちろん、不倫相手の氏名・住所まで分かっていた。離婚後もその女との関係が続いていたことも知っていた。彼女は、部下として仕事をしていればと思い何ら気に留めることもなかったが、ある日を境に、彼の覇気が消えうせてきた。

 それが気になって言葉をかけると、食事に誘われるように。彼女は、ただ義務的な感覚で食事につきあっていたが、彼は身の上話をするようになっていった。両親は既に他界し、兄弟仲も悪く、一人娘は元妻が連れて行き、会うこともかなわない。天涯孤独の身だと目を潤ませた。

 バリバリの営業マンという姿しか見たことのない彼女は、あまりのギャップにほだされ、同情してしまったと後悔する。結局はその不倫相手とも別れた。それからというもの、彼のことが気になってしかたがない。「恋、いやそれは違う。かわいそうな身の上に同情しただけ」と自分に言い聞かせて仕事をした。しかし、深い関係になるには時間はかからなかった…。

 そして、情に身を任せた一時的な感情の成り行きと、恋人でもない関係が半年を過ぎたころ、妊娠してしまった。結婚などまったく考えていなかった彼女は、おなかの子どもに自責の念があるものの、当然、中絶手術をするものだと思って彼に告白したが、思いもかけない展開になった。彼は、「結婚しよう。子どもを産んで温かい家庭をつくろう」と。そして、彼女は退社して籍を入れた。

 それから3年、平穏な時間が流れていく。このまま穏やかな生活が続くものだと思っていた…。次第に夫の行動に変化がおきていく。それまで、どんなに遅くても必ず帰宅していたのに、飲み会のあと車で寝たとか、休日のゴルフが多くなったり、子どもと過ごす時間もなくなっていく。そんな状態が半年続いたが、妻は夫を問い詰めることはしなかった。理由は、1年前に家族のためにと数千万のローンを組んで家を購入してくれたこと。そこまでしたのに、家庭を壊すことはないと妻は確信していたからだ。しかし、それを放任したことが後に取り返しのつかない状況に陥ることになっていく…。

 (次回に続く)

2020年11月13日金曜日

11月13日

 


探偵シリーズバックナンバーより~

 

「家出少女を捜せ!『神待ちサイト』

 

 手掛かりはないのか…と諦めかけていた時、衣装ダンスの籠の中にA社の「多機能携帯音楽プレーヤー」の空き箱を見つけた(前回より)

 親に確認すると、これは娘に言われて誕生日にプレゼントとしたものだ。親は、この「多機能携帯音楽プレーヤー」が音楽やゲームしかできないものだと思っていたという。しかし、Wifiがあるところなら、インターネットもメールもできる。そのことを伝えると、驚きを隠さなかった。また、この機種のメール履歴やアドレス帳は、ID・パスワードが分かればパソコンからもアクセスが可能なのだ。しかし、ID・パスワードを変えてしまうと、本人が使えなくなってしまう。できる限りそれは避けたい。三日三晩、娘が置いていった携帯電話や家の共用パソコン等を解析し、ついにID・パスワードをヒットさせアクセスすることができた。しかし、そこには驚愕(きょうがく)の事実が。

 少女は、俗にいう「神待ちサイト」といわれる、家出したい女子中高校生を募集しているサイトに「家出したいので~。誰か~」というような内容を載せていた。全国各地の20人以上の男とのやり取りがなされていたが、その大半は買春目的のもので、そのたぐいの男たちとのメールは全て遮断していた。浮上したのが、家出直前までやりとりを継続していた東北地方に住む、自称35歳の自営業の男だった。

 この男とは写真まで交換し合っている。そこには、犯罪であることを認識していながら、家出の手順や注意事項まで指示していた。そして、失踪当日の朝7時20分「もうすぐ着くよ!」とのやり取りが最後だった。限られた情報の中でこの男を調査すると、いろんなサイトに「家政婦募集!  若い子希望!」などという怪しげな掲示をしていた常習者であることが判明。間違いなく、この男のところにいる。一刻も早く少女を保護しなくてはならない。身体の安全が最優先だ。すぐさま東北に飛んだ。

 地元の警察に事情を説明したところ、幸い我々の調査内容が「刑法224条」の証拠になる、つまり事件性があると判断してくれたことで協力を取り付けることができた。それから3日後、少女を無事保護することができた。◆刑法224条(抜粋)◆未成年者を略取し、又は誘拐した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。【未成年略取・誘拐罪について】未成年者を保護されている環境から離し、犯人又は第三者の支配下に置くことで成立する。

 未成年誘拐罪は、だましたり、誘惑して自分から従うようしむけて支配下に置いたときに成立する罪。ネット社会に潜む危険な現実。この現実から目をそむけることはできないのだ。

 (前回はホームページをご覧ください)

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2020年11月9日月曜日

11月9日

 


探偵シリーズバックナンバーより~

 

「家出少女を捜せ!『神待ちサイト』

 

 【さまざまな報道によると、見知らぬ人と交流できる「サイト」を利用して、事件に巻き込まれる18歳未満の少女が増えているという。特に、「神待ちサイト」と呼ばれるものは、家出したい、また、家出している少女を狙っているものだ。警察庁のまとめでは、今年半年に保護した人数は昨年より約90人多い600人。犯罪種別では、淫行など青少年保護育成条例違反が50件増の約400件、児童買春が約90件増の200件超となっている】

 7月の中旬、隣県に住む夫婦が相談に来た。高校2年生の二女が家出をして行方が分からないという。少女の写真の印象は、非行とは無縁な地味で真面目を絵に描いたような少女だった。警察に届けたが事件性はないとして真剣には向き合ってくれないと憤る。それもそのはずだった。話を手繰り寄せていくと、5月にも家出をしていた。その時は、5日で帰宅し娘を連れて警察に説明に行った際、かたくなに口を閉ざし、一切口を開くことがなかった。つまり、「家出の常習」「警察に対して非協力的」と位置づけされてしまったのだろう。さらには、家出・失踪も年間約10万件もの届出がある。警察も動ききれないのが現状だ。

 ここで肝心なことは、家出の背景を把握することだ。両親は、親友とのとのいさかいしか思いつかないと頭をひねるが、話を聞く中で少女の痛みも少なからず見えてきた。

 両親は、共に大学で教べんを取る厳格な教育者。一回り年の離れた兄(長男)は勤務医。9歳上の姉(長女)は歯科医という家庭。少女本人も県内トップクラスの女子高に入学したものの、両親は無意識のうちに兄姉と比較してしまい、少女は心に傷を重ねていたのだろう。ちまたでは、女子高生に関わる事件が後を絶たない。何としても探し出し無事に保護すること。それが我々に課された使命だった。

 7月の初め。学校へ行くといつも通り最寄り駅まで自転車で家を出た後、消息を絶った。自転車は駐輪場に置かれたまま。携帯は部屋に置かれていた。所持金は1万円。部屋を探索するが、目ぼしいものは出てこない。手紙や雑誌のひとつもなく、あるのは参考書の類いばかり。勉学に励む真面目な少女という背景しか見えてこない。

 手掛かりはないのか…とあきらめかけていた時、衣装ダンスの籠の中に、A社の多機能携帯音楽プレーヤーの透明なアクリル製の空き箱を見つけた。これが重要な手掛かりになると確信する。

 我々GKは、これまでテレビ番組の人捜しで名をはせた探偵。プライドにかけて少女を見つけ出すと誓った…。しかし、見えてきたのはネット社会の弊害、いや功罪ともいえる現実だった…。

 (次回に続く)

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2020年11月6日金曜日

11月6日

 


探偵シリーズバックナンバーより~

 

「極悪妻…許しがたき悪行②」

 

 【埼玉県A 市に住む33 歳夫。内容は妻の不倫。タンスの奥に、派手な下着が隠されていた。妻の行動が怪しい思い始めた矢先、「離婚したい」と言われた。夫は自宅内にIC レコーダーを仕掛けた。驚くべき事実が判明。不倫相手の子を妊娠していた。6 週目で、不正出血があり一緒に婦人科に行くという。夫婦には3歳と1歳を過ぎたばかりの2 人の娘がいる。ICレコーダーを確認すると、妻は自分も離婚する事や相手の男性に離婚を迫っている事、子供を産むという強硬な態度が見て取れ、男性はことが発覚することを相当恐れている。一緒に産婦人科に行くという平日に調査。男性が迎えに来た。着いた先は車で30 分ほどのレディースクリニックだった

 男性と妻が連れ立って院内へ入る。探偵も潜入し様子を伺うと、男性も一緒に診察室に入った。夫に状況を説明する。なんとこのレディースクリニックは、娘2人を出産したところだった。この信じがたき行動に、夫は言葉を失ってしまった。診察が終わり、待合で妻は男性とともにエコー写真を見ている。流産したわけではなかった。2人は、クリニックを出て大型ショッピングモールへ立ち寄り、食事の後、駐車場の奥まった場所で2時間ほど車内にいた。前後に調査車両を配置して車内の様子を伺い証拠映像をとる。2人は抱き合い、キスを何度も繰り返している。そして、保育園の迎えに間に合う時間帯に妻をアパート前で降ろした。

 その後、男の尾行に切り替える。男の家を判明させ素性を明らかにしなくてはならない。行きついたのは隣県の農村地帯にある比較的大きな農家。本宅と新宅が同じ敷地内に建っている。男の帰りを待っていたかのように、夏休みで自宅にいた小学生低学年の女の子が駆け寄り抱きつく。名前を調べ夫に報告。そこには驚きの事実が隠されていた。男の家は妻の実家と同じ組内で、しかも親戚同様の付き合いをしている家。妻の相手は35歳の長男で地元役所の公務員。夫と妻の結婚式にはその父親も出席していたという。 夫が言うには、地元では歴史のあるお囃子(はやし)の時、妻が子供を連れて3日ほど帰省した。IC レコーダーにあった6週目、この帰省時期と重なる。あまりのできことに、夫は電話口でおえつしていた。

 その後も調査が続いた。妻は離婚してくれないと子供を産む、男はおろしてほしい…。妻の強硬な態度に男はへきえきしている。妻の要求に仕方なく応じるように、足しげく男は妻の元へと通い密会を繰り返している。夫はどうしていいのか冷静に判断できない。現在はGKのカウンセラーとともに、夫とその両親を交えて最善策を模索している。

 (前回はホームページをご覧ください)

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2020年11月4日水曜日

11月4日





 探偵シリーズバックナンバーより~

「極悪妻…許しがたき悪行①」

 

 8月某日、午前1時の電話。埼玉県A市に住む33 歳夫からの悲痛な相談。内容は妻の不倫。今年4月に仕事に復帰してから、夜の外出が増え常にスマホ持ち歩きロックをかけている。タンスの奥には、派手な下着が隠されていた。また、何かにつけてけんかを仕掛けて来るような言動が多くなり、妻の行動が怪しいと思い始めた矢先の1週間ほど前、唐突に「離婚したい」と言われたという。

 夫は、罪悪感を抱きながらも、自宅内にICレコーダーを仕掛けた。そして驚くべき事実が判明した。それは不倫相手の子を妊娠して6週目だということ。不正出血があり一緒に婦人科に行くという。夫婦には3歳と1歳を過ぎたばかりの2人の女の子がいる。夫はレントゲン技師、妻は臨床心理士で病院に勤務していた時に知り合い結婚した。妻は隣県の出身。

 夫とは翌日に面談した。目鼻立ちが整ったいわゆるイケメン。礼儀正しく優しさがにじみ出ている好青年。写真の妻も容姿端麗、女優・アナウンサー並みといっても過言ではない。夫がIC レコーダーに録ったものを確認すると、妻が相手の男性に離婚を迫っている事や子供を産むという強硬な態度が見て取れた。男性がへきえきしている様子や、ことが発覚するのを相当恐れているのが分かる。つまり、妻は妻子のある男性と不倫したあげく妊娠し、その男性に離婚を迫り、子供は産むというやり取りが記録されていた。話をする夫の涙が止むことはなかった。夫の心の痛みは計り知れない。その痛みを享受し調査が始まった。

 一緒に産婦人科に行くという日、夫は予定どおり8時に自転車でアパートを出る。それから15 分後、妻は子供2人を保育園に送り9時前に帰宅。夫の話では、近くのスーパーの2階の駐車場へ男が迎えに来るとのことだったため、そこにも探偵を張り込ませ尾行に備える。すると、予想に反して1030分、アパートの駐車場に他県ナンバーの車が停車した。この車が怪しいと思ったとたん、化粧を施しワンピースに身を包んだ妻が助手席に乗り込んだ。男が相当警戒の目を向けて来ることを想定し、車2台とバイクで慎重に尾行する。最も注意を要するのは、信号で停車した時にすぐ後ろにつかないことと、信号の変わりばなに見逃さないことだ。

 車は国道に出た後、渋滞を回避するため住宅街のわき道をすり抜けていく。行き着いた先は、車で30 分ほどのレディースクリニックだった。妻だけがクリニックの扉をくぐる。すぐさま出てきて、再び車に乗り込み発進。受付を済ませたのか。その後、近くのコーヒー店に入った。夫から電話が入り一通り行動を説明する。そこには驚がくの事実が。このクリニックは

 (次回に続く) 

 *本文はいくつかの事例を基に構成されています。盗用・無断転用・無断転載を一切禁じます。

2020年10月30日金曜日

10月30日


 

偵シリーズバックナンバーより~

 

「出張する妻を追え!

 

 夫の肌を忌避するようになった妻の浮気を疑い始めた。妻は薬剤師で、同業で組織するボランティア団体の役員として月に1、2回各地に出張する。妻の不在時に見たクローゼットの奥にひっそりとあった派手な下着。嫉妬に震えた。その妻が来週末名古屋へ出張する…。(前回より)

 調査当日。依頼人の夫が出勤してから1時間後、自宅にタクシーが横付けされた。O駅で降り、新幹線ホームへ向かう。東京駅で乗り換え、名古屋駅に降り立ち、会議の会場となるホテルに。既に60人ほどが集まっている。会場のドアが視認できるソファで見張る。

 3時間の会議中、妻は一度も会議室から出てこなかった。隣の会場で懇親会がある。会議が終わり一斉に参加者が出てくる。妻は懇親会に参加することなく会場を後にした。妻はタクシーを拾い、名古屋城に近い有名なホテルで降りた。チェックインをしてカードキーを受け取る。妻の部屋を特定できるかどうかが、この調査の成功の鍵を握る。

 人も多く尾行することは難しくなかったものの、ポーターが妻の荷物を持ち、エレベーターに同乗したことは予想外だった。従業員は、犯罪の未然防止のための防犯教育を受けているからだ。あからさまに警戒の目を向けてくることはないが、細心の注意を払わなくてはならない。

 後から同乗した探偵は、ポーターから階数を聞かれた。ランプが点灯しているのは、10階と14階の2つ。エレベーター内には、妻とカップル1組と探偵一人。とっさに14階と告げた。10階で降りないことをひたすら祈る。しかし、妻は10階で降りる気配。不審がられずに、妻とポーターとともに10階で降りなければ部屋の特定が困難になる。

 そして10階で止まった瞬間、探偵は携帯電話のフェイク着信(実際に電話はかかってきていないが、着信音を鳴らすこと)を作動させ、迷惑のかからないようにと、うまく10階で降り、部屋を特定した。

 内偵の結果、妻の宿泊する部屋はキングサイズのダブルの部屋だった。ロビーで待機する探偵に、部屋の出入りの映像を抑えるために適した部屋番号を伝えて、宿泊可能か確認させる。もちろん、不審がられず予約するために、「亡き妻との思い出の部屋…」というシナリオでアプローチした。幸い、その部屋がとれた。そして、約1時間後…。会場で見かけた50代後半の紳士然とした男性が部屋の中に消えた。明日も会議がある。会議終了後は、男の尾行に切り替えその素性を暴く。仕事とはいえ夫の気持ちを思うと、その現場には殺伐とした空気が流れた

 (前回はホームページをご覧ください)

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2020年10月26日月曜日

10月26日

 


探偵シリーズバックナンバーより~

 

「出張する妻を追え!

 

 相談内容は、妻の浮気疑惑。県南から来た夫は勤務医、妻は大手ファーマシーの薬剤師をしている。夫は医師というより、真面目さを絵にかいたような地味な公務員という風体にしか見えない。

 妻は、内向的な学者肌の夫とは対照的で、薬剤師の傍ら薬剤師で組織するボランティア団体の役員として活動している。月に1、2回の出張は北海道から九州まで全国各地にわたる。

 夫は、1年半ほど前から妻の浮気(不貞)を疑うようになった。振り返れば、一人息子が医学部に合格して家を離れた時期と合致する。夫婦の世界に突如として現れたエアーポケットのような空間。ふと気が付くと、これまでの会話は息子に関することばかりだった。息子の存在そのものがこの家庭の支柱のような役割を為していたと気付いた。

 勤務時間の不規則な夫ではなく、息子の塾の送迎から学校行事など何から何まで妻が関わってきた。いざ二人きりになると、会話がない。夫は酒も飲めず趣味もない。医者だからといって女性にもてるというような世間一般の印象などは偶像にすぎないと自分をどこか卑下していた。

 夫は妻を愛していた。夫には現在も過去も、妻が唯一無二の女性だった。夫婦間に次第に生じてくる隙間。どうしていいか分からない夫は、そのもどかしさにいら立ちを覚えてしまう。そのいら立ちが何かのまるで布石のように、1年ほど前から妻が夫の肌を忌避するようになった。触れられたくないというような雰囲気が広がり、結局、寝室も別々となった。

 夫が妻の写真をおもむろに出してきた。息をのむとはこういう感覚なのだろうか?

 3年前の写真というが、その透明感のある美しさと漂う品格に驚いた。とても45歳とは信じられない。誰しもが、この妻を美人というに違いない。写真を見せた夫には、誰しもが「きれいな方ですね」という言葉を発することを心得ている優越感のようなものが見て取れた。

 その妻が来週末、ボランティア団体の役員会のため、1泊で名古屋に行くという。その日から調査してほしいというものだった。調査の決断は、妻の不在時に見たクローゼットの奥にひっそりと隠れるようにあった目にしたこともないような、数枚の派手な下着。嫉妬に体が震えた。愛していたからこそ、夫の心は苦痛から激痛になった。相談に訪れた時の真面目な夫の姿は、嫉妬に苦しむただの男になった。

 「真実を知ること」これが最後に残された男としての自尊心だった。調査当日。妻の艶やかな化粧と華やかないでたちは、この後に起こりうる現実を想起させるには十分だった…。

 (次回に続く)

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2020年10月21日水曜日

10月21日

 


探偵シリーズバックナンバーより~

 

「無防備な夫・覚悟を決めた妻

 

 「夫のスマートホンを手にすると、SNSで知り合ったとされる女性との赤裸々なやりとりと密会場所に夫がアパートを契約したという内容があった。写真フォルダには女性が寝そべっている写真もあった…」(前回より)

 午後6時、宴会が終わった。夫は最後に車を出し、携帯を片手に自宅とは違う方面へ車を走らせる。カップルにふんした探偵が乗る追跡車両と、その後方にバイクが、慎重な間合いを取りながら尾行する。

 幹線道路を走ること20分、夫の車は信号のない路地を左折したかと思うと、急に田園地帯へ向かう脇道にそれた。帰りが遅いことに女でもいるのかとなじった妻の行動が、夫の警戒心を招いている可能性もある。

 尾行が発覚することはプロとして許されない。追跡車両は脇道に入ることなく通り過ぎる。50㍍後方からついてきたバイクは、すべてのライト類を消して、夫の車のテールランプを追いながら、追跡車両に無線で位置を知らせる。

 夫の車は、田園地帯の抜け道を通り過ぎると、ある小学校の裏手にある分譲地の中に入り、公園脇に車を停車した。この付近に夫が密会場所として契約したアパートがあるのか? 公園と道路の境に建つ古ぼけた街灯の明かりだけを頼りに目を凝らす。すると、30㍍ほど先に、3方を一軒家に囲まれて、ひっそりと建つ駐車場のない2階建ての古いアパートがあった。

 この方向からは、2階部屋の一部のベランダ側しか見えない。追跡車両を対面方向へ配置させ待機させる。すると、夫が降車しアパート方面へ歩き出す。やまを張り、カップルを装った探偵2名を先にそのアパートへ向かわせる。対象者が警戒していたとしても、その警戒の目を向けるのは後方でしかない。先にカップルがアパートの軒先に居ても不審がられることはないからだ。

 どこの部屋に入るのか?夫は1階の一番奥の部屋のチャイムを押した。開けたドアには、女性の腕が見えた。先に女性が待っていたということになる。出入りの映像を抑えなくてはならない。軽ワゴン車を現場に運ばせ、近隣住民の不審の目をそらすため、ドア側面には「○○工務店」という看板を取り付け、後部座席に身を隠した探偵がビデオを片手にドアを注視する。他の探偵は、出てきた女性を追尾すべく、近くに車を止め、エンジンを切り暗闇の中で寒さと対峙する。張り込みは辛抱との闘いだ。

 もうすぐ日付が変わろうとしたころ、2人は出てきた。女性は夫の車に乗って、市内の24時間営業のスーパーで車を乗り換え、10分ほどにある、明かりのついていた一軒家に帰宅した。そこには、他の車と真新しい子どもの自転車が置いてあった

 (前回はホームページをご覧ください)

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2020年10月19日月曜日

10月19日

 


探偵シリーズバックナンバーより~

 

「無防備な夫・覚悟を決めた妻

 

 「弁護士からの紹介で…」と県東に住む、30代の妻。小柄で、ショートカットが似合う。小気味いい話しぶりが印象的だ。赤いセルフレームが目の強さを印象づける。夫は、大手企業の管理職をしている。夫には、離婚歴がある。10年前に会社の同僚と職場結婚をしたが、舅(しゅうと)・姑(しゅうとめ)との折り合いが悪く、わずか半年で嫁が家を出た。

 妻にも、離婚歴がある。大きな兼業農家に嫁いだが、子どもができないことを姑になじられた。夫はかばってもくれず、嫌気がさして、3年間の結婚生活にピリオドを打った。それからすぐに派遣会社に登録して、夫の職場に派遣されてきたのが、依頼人である妻だった。同じ境遇もあってか、2年前に夫と再婚したのは自然の流れだったという。

 前夫は気が弱い半面、酒を飲むと暴れた。そのせいか、今の夫は酒が好きじゃないから結婚した、という。その夫が変わった。めったに飲まない夫が、去年の夏、スマートホンを手にしてからというもの、夜のみならず、休みの土日も頻繁に家を空けるようになっていったという。

 そしてある日、夫が酩酊( めいてい)し深い眠りについた時、妻は自責の念にかられながらも、そのスマートホンを手にしてしまった。すると、SNSで知り合ったとされる女性との赤裸々なやり取りが残されていた。その中には、密会場所として夫がアパートを契約したという内容もあった。フォトフォルダを開けてみると、そのアパートらしき部屋で、女性が枕を抱いて寝そべっている写真もあった。

 妻は、ショックというより、まるで無防備な夫のゆるさと、メールで使われていた絵文字や幼稚な言葉の表現などに、一気に夫に対する気持ちが興ざめした、と何かが吹っ切れたように淡々と話す。そこには、夫に対する恨みとか女性に対する嫉妬ではなく、これからの人生を見据えた強い人間としての妻が構えていた。

 そして、メールの内容から写真まで証拠になりそうなものは全てデジカメに写し弁護士に相談した。しかし、これだけでは浮気つまり不貞の証拠としては立証が難しい、密会場所の出入りを抑えることが必要と、GKに来た。調査日は忘年会イベントである管理職のゴルフの日とした。

 妻は、この日を調査日と決めた理由をこう語る。「これ見よがしに、忘年会のスケジュールをテーブルに置いて身の潔白をアピールしている」と。ゴルフ場から夫の車を尾行する。宇都宮市郊外の中華料理店。探偵も潜入すると、奥の広間でゴルフの成績発表をしている。20分後、夫が携帯を耳に当てながら店外へ出てきた。依頼人に確認しても夫からの電話はないという。間違いなく密会する。夫のにやついた顔がそれを証明していた

 (次回に続く)

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2020年10月14日水曜日

10月14日

 


探偵シリーズバックナンバーより~

 

「高校教師不倫の結末妻の浮気

 

 【夫の出張日、高校教師である妻は同じ高校の男性教諭とラブホテルに泊まった。翌朝5時にホテルを出て自宅へ戻り、自宅の電話から出張先の夫の携帯へ電話する。あきらかなアリバイ工作。夫はこの過ちは1回だけであってほしいと願い、翌週の休日に再び調査することに】

 次の調査前に、まず妻の浮気相手の素性を暴いた。その男性は、妻の9歳年下の25歳で、両親と妹と暮らしている。父親は公務員で、母親は中学の教員、妹は大学生。次に、前回の調査の映像を再検証する。担当する探偵たちには、特徴・癖など、徹底的に確認することが必要だからだ。男性は、濃紺のスーツ、妻はグレーのジャケットに黒のパンツ。デートでは、妻が終始リードしている。ラブホテルに入るもの妻が手を引いて、部屋を選んだのも妻だった。

 調査開始。夫は妻が動きやすいようにと、次の土曜日は、地方の事業所に出張と偽り、ビジネスホテルへ泊まる手はずにしてある。午前10時、妻は最寄駅の改札まで夫を見送った。夫の姿が階段に消えると、小走りに自宅へ戻り、それから1時間後出てきた。これが妻なのか??と見違えるほどの変身をとげていた。ひざ上のスカートにロングブーツ、顔には、色濃い化粧を施していた。気持ちが浮ついているのがわかる。

 警戒の目を向けてくることもない。副都心の駅で男性教諭と落ち合い、降り立ったのは横浜。中華街で食事をした後は元町を散策する。日が落ちる頃、副都心の駅へ戻り前回宿泊した同じラブホテルへ。そして翌朝5時にホテルを出て、妻は自宅へ戻った。 つらい報告になった。中華街は、結婚前によくデートをした場所。二人が入った店も、交際期間の時、よく訪れていた店だった。夫は、ただ涙を拭うだけ。同席させた夫婦問題カウンセラーと2人だけで2時間カウンセリングを受けた。夫は、妻に事実関係を告げる決断をした。そして、妻が心からの謝罪をし、子どもをつくること、今後、絶対に浮気はしないと誓約書を書いてくれれば、やり直したいと一縷(る)の望みを抱えて帰って行った。

 5日後、再び夫とのカウンセリング。夫の期待はもろくも崩れた。事実関係を伝えると、妻は、謝罪の言葉もなく、「本気で付き合っている訳じゃないし、浮気ぐらいいいでしょ。私は子どもは欲しくないし、この先も浮気しないと約束できる自信はない」と信じられない言葉を言い放ったという。夫は、怒りを通り越して、心底悲しく、開いた口がふさがらなかった。しかし、夫には涙はなかった。二人には社会的制裁を課しますと、まるでつき物が落ちたような笑顔で事務所を後にした。

 (前回はホームページをご覧ください)

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2020年10月12日月曜日

10月12日


 探偵シリーズバックナンバーより~

「高校教師不倫の結末妻の浮気

 

 GK探偵事務所大宮開設の11月2日、突然の相談者がドアノブを開けた。相談者は結婚5年になる32歳の夫。清潔感と知的さを備えている。ただ、悲痛な面持ちと声の小ささに、気弱で真面目な印象を受けた。

 相談内容は2歳年上の妻の浮気疑惑だった。大学4年の時に知り合い、交際期間5年を経て結婚し昨年マンションを購入したばかり。子どもはいない。夫は一流医療機器メーカーの本社に勤める経理マンで妻は高校の教師。妻の様子に変化が現れたのは、今年の新学期が始まってからだ。会話の節々に、今年赴任してきた男性教諭の名前が頻繁に出て来るようになった。担当教科が同じで、さらに同じ部活の監督と部長という立場からと軽く受けとめていたが、その頃から試合や会議という理由で土日も出かける頻度が増え、飲み会という理由で帰宅が深夜になることも。

 内面的には妻の言葉遣いや態度等が急激に優しくなり、外見的にも化粧や服装に気を使うようになってきたという。今週末には宿泊出張を控えている。夫の性格なのか、一旦気になると頭から離れない、仕事も手につかないと、出張日に調査を敢行することに。その日は妻から飲み会と言われていた日だった。

 18時。妻が学校から最寄りの駅に向かう。夫から預かった写真とは装いや雰囲気が違っているが、顎の形と特徴のある輪郭は間違いない。電車で30分、副都心の駅で下車するとデパ地下のワイン売り場を物色し購入した。また駅に引き返し隣の駅で下車。小走りに道路を横断しある銀行の裏手に入った。そこで、大学生とも見違えるような若い男性と落ち合い、満面の笑みで手をつなぎ、迷うことなく、1軒だけあるラブホテルへ入った。カップルを装った探偵も続いてホテルへ。2人はパネルで部屋を選びエレベーターに乗り込んだ。

 探偵は映像を押さえそのままホテルを出て、張り込み場所を選定する。都内の細い路地が入りくむ場所で、とても車で張込めるような場所はない。ホテルの出入り口は2つ。探偵はそれぞれの場所から、いつ出て来るかわからない2人をただひたすら張り込んだ。雨も落ちてきた…。翌朝5時、2人は出てきた。駅のホームで抱き合い、妻を見送る。妻の尾行は女性探偵にまかせ、男を追う。男は電車を乗り継ぎ1時間ほどの一軒家に入った。表札を確認する。それは妻がよく口にしていた、男性教諭の苗字だった…。

 妻は自宅へ戻った。それから1時間後、自宅電話から夫に電話があったと連絡を受けた。妻のアリバイ工作は明らかだった。それでもなお、夫は離婚はしたくないと。1回だけのことであってほしいと願い、翌週も調査をすることに。夫の葛藤は続く…。

 (次回に続く)

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2020年10月9日金曜日

10月9日

 






探偵シリーズバックナンバーより~

「150 万円の真実…57 歳主婦」

 

 「男性に総額150万円を貸した…」という県南に住む57歳の主婦。借用書もない。唯一の証は、男性に振り込んだ銀行口座と今はつながらない携帯電話。相手の住まいも分からない。行政機関へ相談しても聞いてもらえず、揚げ句「男女の関係があった場合だと」と、胸を引き裂かれる侮蔑の言葉を浴びせられたことも、と涙ぐむ。

 依頼人は、公務員として約30年間勤めてきたが、3年前に不慮の事故で息子を亡くし、ショックのあまり退職。それからは、気を紛らわせるために、友達に誘われた動物保護関係のボランティアに参加していた。そこでボランティアに来る、亡くした息子と同世代の男性と知り合った。動物に接する優しいまなざしと、気さくに話しかけてくれることにうれしさが募っていく。それが楽しみとなり、息子の死の痛みが少しずつ和らいでいくようだった。

 将来の夢は飲食店をやることと熱く語ってくれた男性は、父親を知らない。2歳の時離婚した母に育てられたけど、その母も2年前にがんで他界した。犬や猫が好きだったけど、とても飼える環境にはなかったから、仕事の合間にここに通うようになった。現在は自動車工場で期間工員として働いている。依頼人は、男性の不幸な生い立ちを聴いて涙にくれたという。そして、開業資金を融資すると申し出た。その時の喜んだ顔が、嘘だとは信じられないと、いまだに心の片隅で信じている自分がいると、苦悩を語ってくれた。そんな時、わらにもすがる思いである調査会社に頼んだが、ずさんな報告書だけで、何も分からずじまいだったという。不満も言えずに、泣き寝入りをするしかないと諦めかけていた。そんな時、以前から親しくしている会社の女性経営者に打ち明け、GKを紹介されたという。この女性経営者は、金融機関主催の講演会に参加した時、「探偵の有効活用について」というGK探偵事務所の講演を聞いていた。依頼人の望みは、お金よりその男性の真実を知ること。調査開始。20日後その男性らしき人物が判明した。両親が離婚したことは本当だったが、母親は死んではいない。再婚し、夫とその間にできた子供たちと生活している。本人は、早朝の宅配便の荷物仕分けのバイトに通い、10歳年上の女性と同棲、女性の小学生の娘と、犬・猫と共に借家に暮らしていた。

 後日、そのすべての映像を依頼人に見てもらう。依頼人は、その映像を食い入るよう見つめた。暴かれた嘘。しかし、怒るどころか目が潤んでいた。慎ましい生活ぶりと、子供や犬に向けるまなざしは、私と接していた時と変わらない。だまそうとしたわけじゃない、事情があったに違いない、連絡が来ることを信じますと事務所を後にした。

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2020年10月5日月曜日

10月5日

 


探偵シリーズバックナンバーより~

 

告発!妻の浮気・定年を迎えた夫の苦悩

 

 【近年、妻の浮気の相談に来る夫の数が増えている。一昔前は、浮気というと夫と相場が決まっていた…】 

 弁護士の紹介で58歳の夫が相談に来た。小さな体に、真面目さと気の弱さがうかがえる。2月末で40年近く勤めた会社生活にピリオドを打った。定年選択制で退職し、4月からは関連会社で嘱託として第2の就職をすることになっている。誠実さだけが取りえで、酒・たばこもやらず、人付き合いも苦手で、管理職にもなれなかったと自虐的に冷笑する。2人の子どもは、共に結婚して離れて暮らしている。

 妻は8歳年下の50歳。短大を卒業し、結婚後も勤めていた会社を、妊娠をきっかけに退職。下の子が高校に入学したのを機に、その会社にパート社員として再雇用された。妻の浮気の疑惑は、妻の知人という女性からの匿名の手紙での告発だった。妻の不倫相手の名前、3年以上も不倫関係があることもつづられていた。そして、自己嫌悪に陥りながらも、妻のタンスの奥をのぞいてしまった。そこには目にしたこともないような派手な下着が隠されていた。疑惑が確信に変わった瞬間だった。頭が真っ白になった。

 妻は、地味で真面目、どこにでもいるような平凡な女性だった。夫が語る夫婦像は、大きなけんかなどもしたこともない、つまり、不満も少ない反面、楽しさも希薄で、共通の趣味もない夫婦だったと回顧する。夫いわく、真面目なだけの物足りない夫だったと思うと。そして、調査をして真実を知り、告発が本当だとしても、今は離婚のことは考えられない。証拠を得て、不倫相手と別れ、妻が心から反省し謝罪をしてくれたなら、修復に向けて努力すると。真実と向き合わない事には、見えない男に憎悪し、妻に対しての嫉妬に苦悩するだけのつらい人生になってしまうと…。

 歓送迎会で遅くなるという日に調査を決行。妻は、歓送迎会閉会30分前に1人で店から出てタクシーを拾う。バイク尾行班が後を追う。行き着いた先は、10分ほどの自宅とは反対方向の郊外のある有名なコーヒーチェーン店だった。40分後、その店の駐車場に男性を乗せた1台のタクシーが。妻は、店を出て乗り込み、ラブホテルで3時間余りを過ごした。最終的にその男性の家を割る。告発の手紙にあった名前が表札に記されていた。その後、弊社の夫婦問題カウンセラーが夫婦間に入り、結果として妻は涙を流し心から夫に謝罪した。この夫婦の幸せを望まずにはいられない調査だった。

 「浮気(不貞)の証拠は、離婚するためにあるのではありません。夫婦としての絆が、いわゆる雨降って地固まればこれほどうれしいことはないのです。浮気調査の60%は、修復しています」と駒木代表取締役は語る。

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2020年10月2日金曜日

10月2日

 


探偵シリーズバックナンバーより~

 

「悪徳業者」

 

 悪徳業者に騙されてしまったと、30代後半の妻。夫の浮気の問題で比較的費用の安かった探偵業者に連絡して、マンションの一室に来るよう指定された。

 対応したのは40代後半の女性。私も夫の浮気で離婚して子どもを育てていると身の上話から始まり、貴方のつらい立場もわかると共感され、親身さがあったので、ついついプライバシーをあからさまにしてしまった。検討しますと席を立とうとすると、態度が一変、表情や口調も高圧的になり、恐怖を感じた。その後4時間にわたり一方的な話をされ、半ば強引に契約させられた。

 結果がでれば、と気持ちを切り替えたものの、調査終了期間を過ぎても何の連絡もなく、再三電話をかけるが、ほとんど留守電になってしまう。ようやくつながったと思うと、「担当者が不在」ととりあってくれない。夫は、公務員であり、今後の夫の立場に影響がでてしまったらと思うと、警察を含めた公的機関への相談にはとてもためらいがある。しかし、費用は支払っているのでこのまま見過ごすことも出来ない。

 やむを得ず、兄だけに相談し、その業者へ連絡を入れた。兄が、警察に相談することを臭わせると3日後、報告書が届いた。その報告書を目にして、あまりのずさんさに言葉も出なかった。内容は、ほとんど文書で綴られていただけで、写真は夫が入ったとされるレストランと、ショッピングモール地下駐車場に駐車されていた夫の車だけ。夫の姿が映っているものが一枚もない惨憺たるものだった。

 その報告書の内容は、「4時間程度、ウインドーショッピングをしていた」等というもの。もちろん写真は1枚もない。GKで、調査をやり直したところ、夫の浮気の行動パターンは、地下駐車場で浮気相手の車に乗り換えラブホテルへ行くというものであることが判明した。

 ◆悪徳業者の手口◆

 ●「探偵」という業界には、まだまだ悪徳業者が多いのが現状です。探偵とは名ばかりで、素人やアルバイトを雇い、ろくな調査もできずに、法外な料金を請求する探偵社も少なくありません。裁判では証拠として立証できないようなずさんな報告書がほとんどです。GKは、証拠能力が高いとして、多数の弁護士から、依頼人が紹介されてきます。

 ●悪徳業者のその多くは、株式会社と偽って名刺に明記したり、各市町村に事務所があるようタウンページに掲載して実際は転送電話になっていたり、多重広告といって、いろいろな名前を使っているが結局は同じところというような手口です。探偵を選ぶ際には、ホームページの見栄えではなく、ご自身で、その事務所に足を運び、スタッフの対応をよく観察するなど、慎重に選ぶことが必要です。

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2020年9月23日水曜日

9月23日

 



探偵シリーズバックナンバーより~

 

「行き過ぎた夫の浮気と外国人女性」  

 

 「弁護士からの紹介で…」と、県南に住む60代の妻が娘を伴ってきた。小柄で、ショートカットが似合う凛とした話しぶりが印象的だ。家族で自動車整備工場を営み、社員も10名ほどいる。

 妻には離婚歴がある。30数年前に会社の同僚と職場結婚したが、夫の酒癖の悪さに耐えられず、わずか半年で実家に戻った。実家の父が自動車整備業を営んでいたため仕事を手伝うようになり、10年が過ぎ35歳を迎えた頃、取引先の紹介で10歳年下の男性と再婚、娘を授かった。

 真面目な夫は、仕事に熱心に取り組み、個人商店だったものを会社化するまでにした。その後、父親も娘夫婦に家業をまかせ、夫婦2人3脚で懸命に働いてきた。会社も軌道に乗り信頼する社員も育ってきた。時間的にも金銭的にも余裕が生まれ、家も新築したのが2年前。妻は、夫に感謝し、高級外車も買い与えた。今思い返せば、その優しさが甘かったと後悔する。

 ここ1年、妻が何も言わないことをいいことに、夫は接待だ、付き合いだと言って週の半分は朝帰りをするようになった。娘とともに、女性でもいるのか…と疑念を抱き始めた。そして看過できない事態が少しずつ表面化していく。会社の経理を担当している娘が、夫のお金の使い方と使途がわからない金銭が出て行くことに不信感を抱き始めた頃、偶然にも県南のある主要駅近くのマンションの駐車場に夫の車を見つけてしまったのだ。妻は驚くことなく弁護士に相談し、まず真実を知ることが重要と調査をすることに。妻は、ただの浮気ぐらいなら放任してもよいとの器量を持ち合わせていたが、「会社の金を使い込んでいる」ことは、絶対に許せないと憤りを隠せなかった。

 調査開始。張り込む住宅地は、新興住宅地で防犯意識もことさら高く、困難を極めた。工務店・塗装店等の仕様に変装させた調査用の軽ワゴンを用意して慎重に張り込み、追跡車輌とバイクを隠し、尾行を徹底して真実を暴いていった。結果として、夫は2人のアジア系外国人と交際していた。2人それぞれにマンションを借り与え、1日たりとも空けることなく、交互にそれらの女性のマンションに出入りしていた。

 その行動は昼夜を問わず、時には昼と夜と別々の女性のマンションに出入りしている。マンション向かいのビルの非常階段の踊り場からベランダを注視すると、レースのカーテン越しに上半身裸の夫の姿や、日中出かけた公園で、腰に手を回し満面の笑みで顔を寄せ合う姿も…。真面目で仕事熱心な男が手に入れたお金と時間の余裕。踏みとどまることのできなくなった快楽。調査結果を手にした妻は、離婚に向けて弁護士に託した。

 

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2020年9月16日水曜日

9月16日






 
探偵シリーズバックナンバーより~

「突然の離婚通牒単身赴任の夫

 

 夫が単身赴任してから6年。4年前から帰省することが少なくなった。ここ2年はまったく帰ってこない。娘は、調査することを薦めたが、人を疑うことを知らない妻は、気にも留めなかった。そして、娘はお父さんに会いに行こうと、半ば強引に夫の暮らす会社の寮を訪れた。娘は、突然の訪問に戸惑う父親から発せられる空気を感じ取った…。1カ月後、夫の代理人だという弁護士から「離婚したい」との書面が届いた。(前回より)

 金曜日、夫が定時で寮に戻ってきた。着替えをすませた夫は車でパチンコ店へ。店に入った夫は40歳後半とおぼしき派手な化粧をした女性の隣に座る。8時ごろ店を出た2人は、5分ほど行った一軒家の庭先に車を止めた。築40年は経っているだろうか、庭先は車のスペース以外、まったく手入れされていない。

 女性だけが家に入り、わずか5分ほどで派手な身なりに着替えて出てきた。再び車を走らせること30分、郊外の古ぼけたスナックの前に停車すると、女性は手を振ってその店に入っていく。

 夫の車は女性宅とおぼしき一軒家に帰り、自らカギを開けて中に入る。深夜零時を回ったころ、夫は車でスナックへ女性を迎えに行った。帰宅途中、24時間営業のファミレスに入り、女性はワインを飲み始める。カップルを装った探偵が近くの席から耳をそばだてるが、ざわついた店内では2人の会話を拾うことができない。

 しかし、少なくとも夫が代理人を立て離婚を要求したというような会話は感じられなかった。むしろ、そんなことは全く気に留めていない夫の仕草と女性の笑みからは、仲むつまじい夫婦のような空気がただよう。2時間後、肩を組み腰に手を回した2人がもつれ合うように店を出て車に乗り込む。

 女性宅へ戻ると想定して、調査車両を女性宅に先回りさせた。家に入るところを映像に抑えるため身を隠す。不貞行為の証拠を確実にするには、出入りの証拠が重要なファクターとなるからだ。

 ところが、車は途中、国道から脇道に入っていく。尾行に感づかれたのか? いや、全く警戒の目を向けてくることはなかったはずだ。農道を抜けていく。間合いを取り、ライト類を全て消した調査車両がテールランプを追う。そして、車は郊外のホテルへ。10時過ぎに出てきた2人は、女性宅に帰る。

 夫は、金曜日に仕事が終わると、週末を女性宅で過ごし、月曜日の早朝、そこから直接出勤するという行動パターンが繰り返された。そして、月に2回程度はホテルへ行くことも…。調査報告書を弁護士に届け、闘いの準備が始まった…。

 (前回はホームページをご覧ください)

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2020年9月14日月曜日

9月14日



探偵シリーズバックナンバーより~

「突然の離婚通牒単身赴任の夫

 弁護士からの紹介で、東京都下から相談に来た50代の妻とその娘。地味で穏やかな印象を受ける妻の目は既に潤んでいる。娘が状況を話し始めた。

 父親は勤務する大手金属メーカーの工場移転により本県へ単身赴任してから6年がたつ。母はパート勤め、自分は地元の信用金庫に勤務しているという。

 父親は工場近くの独身寮に住んでいる。転勤当初は月に1、2度、必ず帰省し、家族と過ごしていた。家族もそれを楽しみにしていたが、4年くらい前から、畑を借りて始めた家庭菜園の手入れがあるといって、帰省することが少なくなってきた。それでも、年始年末は自宅に戻り家族との時間を共有していた。

 定年まであと5年、これまで家族のために働いてくれた感謝の気持ちから、単身赴任中くらい夫を自由にしてあげようと何の疑いを抱くことなく月日が過ぎていった。

 しかし、とうとうここ2年は一度も帰省することがなくなった。携帯もつながらない日が増えていく。娘は、「父親に女性がいるのでは」と母親に進言したが、母親は元来人を疑うということを知らない性質で、気にもとめなかった。だが娘の疑念は増していく。娘の説得に母親も折れて、今年1月の週末、突然、寮を訪問した。

 管理人に父親を呼び出してもらう。父親は寮にいたが、面会室に座ることもなく、いきなり家庭菜園を案内するといい、車で20分ほどの畑に連れていかれた。よく手入れされた10坪程度の畑。手入れに必要な道具や肥料を保管している物置を開けて説明し始めた夫の姿を目にして、妻のわずかな疑念は吹き飛んだ。

 しかし、娘は違った。突然の訪問に戸惑う父親から発せられる空気を見逃さなかった。言いようのない不安を感じ、父親と言葉も交わさずに母親を連れ帰ったという。父親は引き止めもしなかった。

 娘は、母親に調査することをすすめたが、結局は聞く耳を持たなかった。そして、ついに、娘の不安が的中した。訪問してからわずか1カ月足らず。夫の代理人という弁護士から、「離婚したい」との書面が届いた。突然のことに茫然自失となる。悲しいというより現実を受け止めることができない。それ以降は妻や娘の携帯からの電話に一切出ることはなくなった。

 数日後、本県の法テラスで紹介された弁護士のもとを訪れた。弁護士からの「女性の存在を疑うべき」とのアドバイスと娘の説得に応じて真実を探るべく調査開始。

 平日は工場と寮の往復だけ。そして週末になった。着替えた夫が出てきて車に乗り込む。穏やかで口うるさくない妻の足元を見透かしたような夫の真実が浮き彫りになっていく…。

 (次回に続く。)

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2020年9月9日水曜日

9月9日

 


探偵シリーズバックナンバーより~

 

「闇の扉披露宴の恐怖

 

 【飲み会で知り合った女性は偶然にも同級生の妹だった。人妻であり、好みでもなかったが、相談に乗るうちに結果的に気を持たせてしまうことになり、女性からの一方的なアプローチが始まる。連絡を断ち切るという約束で一度だけ過ちを犯してしまった。それからというもの、断ち切るどころか、電話やメールがエスカレートしていく。無視すると「夫に話す!」という脅しの繰り返し。次第に恐怖に支配されていく…。そんな中、兄に届いた招待状で、女性は依頼人が結婚することを知った…】( 前回より)

 依頼人は、山形からわざわざGKに電話を入れた理由をこう話す。「警備業(身辺警護)の免許があり、かつ調査ができる会社を捜したらGKに行き着いた」と。翌日、山形へ飛び依頼人と面談することに。駅に迎えに来てくれた依頼人は、整った顔だちで優しさと真面目さがにじみ出ているが不健康なほどにやせていた。

 話によると、女性が依頼人の結婚することを知ったあともメールは毎日届き、無視すれば怒り出す繰り返しで、体重も10キロ落ちたとうつむく。そこには結婚を控えた幸せや希望など感じられず、ただ恐怖に支配された依頼人がいた。このことは新妻はもちろん、親族・知人等誰も知らない。女性の兄である同級生も知らない。依頼は「披露宴当日、女性を徹底的にマークし、披露宴会場や2次会会場へ姿を現したら入場を阻止してほしい」という内容だった。

 披露宴当日、早朝6時から女性宅を見張る。6時半、女性は車で山形駅に向かい、7時8分の東京行に乗車。そのまま東京まで行き、浅草に向かった。なにやらメモを見ながら迷っている。すると、あまり知られていないような「縁結びにご利益があると言う神社」を、浅草界隈を皮切りに都内で7 カ所回った。手には「ご朱印帳」のようなものを持ち、なにやら唱えている様子が伺える。その表情は、何かにとり憑かれたような鬼気迫るものがある。尾行する探偵もさすがに気味が悪いとその心情を吐露した。

 午後4時、無事に披露宴が始まったと連絡が入る。このまま山形に戻らず都内に宿泊してくれたらと願うが、午後4時過ぎの山形新幹線に乗車。山形で降り向かった先は披露宴会場方面。尾行する探偵と会場のボディーガードに緊張が走る。女性は、近くのパーキングに駐車すると、披露宴会場のホテルには入らず、何やらメモを見ながらホテルを一周。北の方向に立つと何かを撒いた。確認すると塩だった。それから車に戻ると、お札のようなものを持ちながら念仏のようなものを唱えていた。1時間が経過する頃、女性は車を出して帰宅した。

 この日は事なきを得たものの、報告を受けた依頼人の恐怖は続いている…。

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2020年9月7日月曜日

9月7日

 



探偵シリーズバックナンバーより~

「闇の扉披露宴の恐怖

 

 「結構式場に乗り込まれるかもしれない…」と山形県から相談の電話が入った。いかにも真面目そうで、丁寧な言葉遣いの中に、不安におののく様子が伝わってくる。相談者は35歳の男性。父親の代に自動車部品の工場を立ち上げ、今では従業員を100人抱えるまで堅実に業績を伸ばした会社の2代目、現在は副社長をしているという。

 2年前のプライベートな飲み会で知り合った女性がいた。偶然にも高校の同級生の妹だったが、自分の好みでもなく意識もしなかったが、流れで携帯番号を交換した。今思えば、それが闇の扉の入口だったと後悔する。それから、頻繁に電話やメールが来るようになる。その内容は、夫婦間の愚痴から子どものことなどさまざまな内容に始まり、次第に好意を寄せるメールになっていく。依頼人は、最初は困惑したが、相談されると断れない性格と、自分が好かれているという自己満足もあり、面倒だと思っても親切丁寧に対応してしまった。それが結果として相手の誤解を招き、気を持たせてしまう要因になった。週に1度は食事に誘われ、時には相手が子どもも連れてくることもあった。

 依頼人は、相手の女性が人妻であり、何より自分の好みのタイプではないことから次第に疎ましく感じるようになっていった。電話もメールもやめてほしいと話したが、相手の女性は、憤怒の形相で「ふざけるな!」と語気を荒げた。女性の本当の姿に驚き恐怖を感じるように。そんな依頼人を見透かすように相手は強気になっていく。そして、うなだれる依頼人の様子を見た女性は、憤怒の形相とは一転、すがるような口調で「一度だけ、一緒に泊まってほしい。それを一生の思い出に、もう連絡はしないから…」と懇願した。

 これで断ち切れるならと、一度だけ過ちを犯してしまった。やっと解放されるという安堵もつかの間、女性は、さらに増長し以前より頻繁に電話やメールが来るようになった。無視をすると、「夫に話す!」など、脅迫まがいのメール。何度か警察に相談しようとしたが、事が公になることが怖くてできない。それからは関係を持つことはなかったが、相手の呼び出しに応じなくてはならないという、負のスパイラルに落ちてしまった。

 今年7月、取引先の紹介で、ある女性を紹介され、3カ月後に結婚をすることになった。不安を抱きながらの結婚には躊躇したが、素晴らしい女性であり、ましてや両親がことのほか喜んでいるのを目の当たりにすると、そのまま結婚に向けて進めていくしかなかった。そして、悪夢が…。同級生に披露宴の招待状を送った。それを知った、妹であるその女性のとった行動が、依頼人を震撼させる事態へと発展していく…。

 (次回に続く)

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2020年9月4日金曜日

9月4日

 


探偵シリーズバックナンバーより~

 

 

「嫁の本性と悪あがき

 

 嫁の行動に浮気の疑念をもった夫の両親。息子は絶対的に嫁の言いなり。息子に事実を確認したほうがいいとは言える術もない…。(前回より)

 嫁の勤務先のシフトは誰も知らない。日時を絞り込んでからの調査は不可能である。しかし、依頼人である舅・姑は、徹底的に真実を知りたいと覚悟を決めた。調査開始。恐るべき嫁の本性は初日から暴かれた。

 〇調査1日目〈年下の男〉 子どもたちが学校へ行き、洗濯をすませると、夫が夜勤明けで寝ていることは気にもせず、お昼前に自宅を出た。車で20分ほどの学生向けのアパートが多い地区に入っていく。この一帯は、すれ違いもままならないぐらい道幅が狭く、車での尾行は難しい。車は距離を置き、スクーターと自転車を先行で尾行させる。すると、ほどなくして古ぼけたアパート入口付近にいた、明らかに年下と分かる学生風の男性が乗り込んだと無線が入る。そのままホテルへ直行して3時間過ごし、パート先のファミレスへ。

 〇調査4日目〈風俗店のバイト〉 昼過ぎに家を出た車は、宇都宮近郊のホテル街へ入り、そこにあるマンションの一室に入った。1時間ほどすると男性とともに出てきて、車の後部座席へ。するとすぐ近くのホテルの前で妻だけが降りて、部屋に消えた。90分すると同じ車が迎えに来た。妻は、派遣型風俗店でバイトしていたのだ。

 〇調査6日目〈初老の紳士〉 午後6時、夫が夜勤に出かけると間もなく、妻の車が動く。高速道路で北に向かい、一つ先のインターで降りると、すぐそばのホテルへと入った。このホテルは、一部屋に車が2台駐車できる造り。妻の車はグレーのセダン車の隣へ駐車した。証拠となると、部屋から出てくる映像がなんとしてもほしい。しかし、部屋の前のスペースはない。ただ一カ所だけ、その場所は存在した。それは、雑木林に囲まれたホテルの塀のわずかな隙間だった。ビデオを構える。降りしきる雨、湿気とむせ返るような暑さ。合羽を着こんで、身じろぎもせずに注視する。それから4時間、二人は出てきた。その男は白髪の紳士然とした男性だった。

 継続調査で、白髪の男性と年下の男性とは週1回ずつホテルへ、週1回は風俗店でバイトしていることが判明。男たちの素性は、年下の男性は嫁と同じファミレスでバイトしている大学生、白髪の男性については…。弁護士にこの事実を伝えてもらうと、嫁は悪びれた様子のかけらもなく、「調査するなんて許せない!!」とたんかを切って家を出ていってしまった。この事実を知っても息子は、「俺が悪いんだ」と、嫁の呪縛から逃れられないでいる。

 (前回はホームページをご覧ください)

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2020年8月31日月曜日

8月31日

 


探偵シリーズバックナンバーより~

 

「嫁の本性と悪あがき

 

 降りしきる雨、湿気とむせ返るような暑さ。かっぱを着こんだ探偵が雑木林に囲まれたホテルの塀のわずかな隙間から、身じろぎもせずにビデオを構える。雨ほど探偵泣かせの状況はない。雨に打たれて雑草が独特のにおいを放ち、息が詰まりそうになる。まるでナメクジにでもなったかのような気分の中、男女が入った部屋のドアノブを注視する。何としても、不貞行為の証拠を抑えなくてはならない…。

 弁護士の紹介という60代の夫婦が相談に来た。相談のあらましは父親の口から語られた。敷地内に別棟を建てて暮らしている息子の嫁に対する浮気疑惑だった。嫁は日頃から舅・姑を避けるように生活している。優しく真面目なだけが取り柄の息子だったが、完璧なまでに嫁の尻に敷かれている。少しでも嫁のことを悪く言おうものなら実の親とも口をきかなくなる。両親もなるべく、小言は言わないようにしているという。

 30歳の息子は、会社の元同僚で2年の交際を経て結婚した嫁と、その間に今年小学校に入学した男の子がいる。息子は工場で3交替の勤務に就いているが、子どもの面倒は全て両親が見てくれる環境にあり、ファミレスでパート勤務の嫁は時給の良い深夜にシフトを入れることが多い。結果としてほとんどすれ違いの生活を送っているという。

 嫁に対して浮気疑惑を持ったきっかけは、小学校に入学したばかりの孫が、夜中に体調が悪くなったことだった。嫁は仕事中だったが携帯を鳴らしてみた。案の定出ない。1時間待ったが折り返しの連絡も入らなかった。嫁が怒ると分かっていたが、やむを得ず職場である店舗に電話をかけると、店長を名乗る男性が2時間前にシフトが終わってあがったとの返答があった。

 以前、勝手に医者に連れて行って神経質すぎるとなじられたことがあるが、どうしても心配で救急当番医に連れて行った。幸い大事にはいたらなかった。とてもこのことを嫁に話すことはできない。また、なじられ、仕事先にまで電話を掛けたことに激昂するかもしれない。仕方なく息子にだけは話をした。後日、嫁に確認したと言って、息子はその訳を話し始めた。「その日は他店の応援に回されたんだよ」と、取りつく島もなかった。その話が本当なら、嫁の勤務する店舗でもその事実は言ってくれたはずなのに、息子はそれが本当のことだと信じて疑わない。

 息子に事実を確認した方がいいとは言える術もない。孫のことを思うと、家族仲良く暮らしてさえくれればいい。何もなければそれに越したことはない。とにかく真実を知りたい…。そんな思いを弁護士に相談しGKを紹介されたという。調査開始。恐るべき嫁の本性が次々と暴かれていく…。

 (次回に続く)

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2020年8月28日金曜日

8月28日

 


探偵シリーズバックナンバーより~

 

33 年の歳月娘は今

 

 夫の実家である農山村で夫の両親と同居することになり、休む暇もなく働かせられた。子ができないことを責められ、ようやく娘ができたと安堵(あんど)したのもつかの間、産後の肥立ちが悪く入退院を繰り返し、娘が2歳の時、離縁させられた。(前回より)

 当時の住所はない。幹線道路が抜け、大型店舗が軒を連ねており、依頼人の記憶に残るのどかな農山村地区とはまるで様相が違っていた。今回の調査は、単に娘の所在を突きとめればよいというものではない。娘のプライバシーを最大限に配慮しつつ、母子の名乗りをあげることができたらという母の切ない思いを背負っている。

 現地に乗り込み2日後、依頼人が嫁いだ家を突きとめた。糸を手繰り寄せるように調査を進め、当時の実情が分かる人物を絞り込む。ようやく娘と中学の同級生だったという人物と接触することができた。事情を説明すると、快く協力を得ることができた。同級生に同行を依頼して女性探偵にその家を訪問させる。

 すると、嫁ぎ先には、父親の妹夫婦が住んでいた。警戒されないように話を引き出す。舅(しゅうと)は30年前、姑(しゅうとめ)は20年前に他界し、父親は娘が4歳、つまり依頼人と離縁してから2年後に東京に働きに出て、姑の葬儀後音信不通となったという。

 娘は子に恵まれなかった妹夫婦に育てられた。現在は、東北最大の都市で一人暮らしをしながら美容室で働いているという。結婚の経験はない。翌日、その都市へ向かい、美容室を見つけ女性探偵を潜入させた。しかし、女性スタッフが6人もいて人物が特定できない。

 探偵が外からガセ電話を入れて女性探偵が人定をするという作戦をとる。電話が鳴るとスタッフが受話器を取り、ある女性のもとへ駆け寄り耳打ちした。店長と呼ばれていたスタッフだった。その女性が受話器をとった。つまり、この女性が33年前に別れた娘だった

 この先は、慎重を期さねばならない。三十有余年の時空は深くどんな感情が噴き出すのか想定できないからだ。店の明かりが消えて最後に出てきた娘に声をかける…。娘は、「恨みなんかまったくありません。叔母夫婦がわが子のように愛情を注いでくれましたから」と語り、持参した依頼人の現在の顔写真を見せると、私、似ていますねと屈託のない笑顔を見せた。「会ってもらえないか?」との問いに、少し時間をくださいという。それから2カ月、私たちが仲介し、ようやく今月末に、33年ぶりの対面がかなう。この長い年月の時空が埋まればいいと、ただひたすら願うしかない。

 (前回はホームページをご覧ください)

 *本文はいくつかの事例を基に構成されています。盗用・無断転用・無断転載を一切禁じます。