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2020年9月7日月曜日

9月7日

 



探偵シリーズバックナンバーより~

「闇の扉披露宴の恐怖

 

 「結構式場に乗り込まれるかもしれない…」と山形県から相談の電話が入った。いかにも真面目そうで、丁寧な言葉遣いの中に、不安におののく様子が伝わってくる。相談者は35歳の男性。父親の代に自動車部品の工場を立ち上げ、今では従業員を100人抱えるまで堅実に業績を伸ばした会社の2代目、現在は副社長をしているという。

 2年前のプライベートな飲み会で知り合った女性がいた。偶然にも高校の同級生の妹だったが、自分の好みでもなく意識もしなかったが、流れで携帯番号を交換した。今思えば、それが闇の扉の入口だったと後悔する。それから、頻繁に電話やメールが来るようになる。その内容は、夫婦間の愚痴から子どものことなどさまざまな内容に始まり、次第に好意を寄せるメールになっていく。依頼人は、最初は困惑したが、相談されると断れない性格と、自分が好かれているという自己満足もあり、面倒だと思っても親切丁寧に対応してしまった。それが結果として相手の誤解を招き、気を持たせてしまう要因になった。週に1度は食事に誘われ、時には相手が子どもも連れてくることもあった。

 依頼人は、相手の女性が人妻であり、何より自分の好みのタイプではないことから次第に疎ましく感じるようになっていった。電話もメールもやめてほしいと話したが、相手の女性は、憤怒の形相で「ふざけるな!」と語気を荒げた。女性の本当の姿に驚き恐怖を感じるように。そんな依頼人を見透かすように相手は強気になっていく。そして、うなだれる依頼人の様子を見た女性は、憤怒の形相とは一転、すがるような口調で「一度だけ、一緒に泊まってほしい。それを一生の思い出に、もう連絡はしないから…」と懇願した。

 これで断ち切れるならと、一度だけ過ちを犯してしまった。やっと解放されるという安堵もつかの間、女性は、さらに増長し以前より頻繁に電話やメールが来るようになった。無視をすると、「夫に話す!」など、脅迫まがいのメール。何度か警察に相談しようとしたが、事が公になることが怖くてできない。それからは関係を持つことはなかったが、相手の呼び出しに応じなくてはならないという、負のスパイラルに落ちてしまった。

 今年7月、取引先の紹介で、ある女性を紹介され、3カ月後に結婚をすることになった。不安を抱きながらの結婚には躊躇したが、素晴らしい女性であり、ましてや両親がことのほか喜んでいるのを目の当たりにすると、そのまま結婚に向けて進めていくしかなかった。そして、悪夢が…。同級生に披露宴の招待状を送った。それを知った、妹であるその女性のとった行動が、依頼人を震撼させる事態へと発展していく…。

 (次回に続く)

 *本文はいくつかの事例を基に構成されています。盗用・無断転用・無断転載を一切禁じます。

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