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2020年12月25日金曜日

12月25日

 


探偵シリーズバックナンバーより~

 

「不倫・結婚・不倫・離婚…①

 

 隣県から相談に来た30歳の妻。両親と幼子を連れ立ってきた。子供の無邪気な笑顔とは対照的に重苦しい空気が事務所に漂う。父親は怒りを自分が全て吸収したような険しい顔つきをしている。母親は子供をあやし、娘はただひたすら俯(うつむ)いたまま。ようやく重い口を開いたのは、父親だった。次第に事の顛末(てんまつ)が見えてきた。

 夫は国家公務員で一回り年上。ことの発端は、4カ月前、送付されてきたクレジット明細書。無意識のうちに中身を見てしまった。

 そこには、勤務していた平日なのに、最寄りのICから那須ICのETCの利用明細が載っていた。夫の勤務形態上、他県に、それも自家用車で出張することなどありえない。さらに、同じ日の那須のレストランの利用明細もあった。このレストランは、交際していた時、よく連れて行ってもらった場所。我慢できずに、それらを問い詰めた。すると、夫は豹変した。

 夫婦間にもプライバシーがある…等、論点をすり替え怒鳴り散らしたあげく、家を出て行ってしまった。それから戻ることはなかった。妻は、自分を責めた。その理由は5年前に遡(さかのぼ)る。夫の勤務先に派遣で3カ月間勤めていたときに、恋に落ちた。妻子あることを知っていたのに、その優しさに抗(あらが)えず、深い関係になった。

 身を引かなくてはいけないとの想いとは裏腹に、関係は半年続いた。土日は逢えない。電話をすることもできない。少しでも楽になりたい、土日の空白を埋めたいと友達の紹介で無理やり彼氏を作って、忘れようともした。でも、楽になるどころか、反対に夫の良さを思い知らされるだけ。想いは留まるところをしらず増幅していった。結局、それから半年が過ぎた。すると、思いもよらないことが起こった。離婚するなど一度も口にもしなかった夫が、離婚したから、一緒になろうと言ってきた。

 そして1年が過ぎ、両親に打ち明けた。こんなにも恐ろしい父親の形相は見た事がなかった。「妻子を平気で捨てるような男に娘はやれない」と一刀両断。結局家を出て同棲し子供ができて婚姻届を出した。

 それから3年、今回の事が起きた。父親の怒りの根源がわかった。しかし、子供たちに罪はないと、夫婦の関係を修復すべく調停を申し立てた。しかし、調停は、予期しない方向へと進んだ。夫は帰ってくるどころか、妻の「非」を作り上げた。

 夫の社会的信用のある立場と饒舌(じょうぜつ)さに調停員は夫の味方になった。口下手な妻の訴えは最後まで聴きいれてはもらえない。しかし、「真実を知ること」という肝心なことを見落としていたことに気付く。それは、夫の女性関係を暴くことだった…。

 (次回に続く)

 *本文は依頼人の了承を得てプライバシーに配慮しています。

 

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