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2021年2月22日月曜日

2月22日

 


探偵シリーズバックナンバーより~


「里帰りの真実…①

 

 両親とともにGKを訪れた30代前半の妻。妻は妊娠6カ月。初めての子を宿している。見た目に悲壮感はない。適切な化粧を施し、衣服にも気を配り、好感の抱かれる容姿と言葉遣いが備わっている。

 夫は、7歳年下で、一流企業の会社員。妻も、結婚するまで同じ会社に勤めていた。会社のイベントで意気投合し1年の交際を経て結婚したという。夫は、この猛暑に体調を崩してはいけないと、妻に宇都宮の里帰りを勧め、生活をしている東海地方のマンションから実家のある宇都宮に戻ってきた。

 実のところ、妻は、懐妊してからの夫の変化に妙な違和感を感じていた。それは、ひとりになることが何よりも嫌だった甘えの強かった夫が、しきりに里帰りを勧めたことや、元来、身なりにはまったく執着しないはずの夫が、下着にまでことさら気を使うようになったことなどだ。

 妻は、そのことを両親に話しても、「気にしすぎだ」と一蹴(いっしゅう)されたが、結局両親は、「イラつくのは胎児によくない」と、「調査をして気が済むなら」との思いで費用を負担し調査することにした。

 探偵たちは東海地方に飛んだ。GK探偵塾の卒業生の中で、地元に住む卒塾生を調査に帯同させ、バイクを調達する。調査成功の鍵を握るのはやはり地元をよく知る人間の「地の利」だからだ。

 夫の退社時刻から調査をすることにした。2日間調査しても、コンビニに寄るだけで10時には帰宅した。しかし、3日目、小走りで車に向かい、どこへも寄らずに帰宅した。気持ちがはやっていて、どこか浮ついている様子が手に取るようにわかる。「必ず動く!」という確信は、経験の深い探偵なら一目瞭然(りょうぜん)。向かいのマンション3階の踊り場からドアを注視している。一瞬たりとも目を離せない。調査車両もエンジンを停止し、暗闇のなかで息を殺す。湿気と異常な暑さが探偵たちを襲い、神経をいら立たせる。

 …すると30分後、夫が出た。私服に着替えた夫は、小走りで車に乗り込んだ。大きな通りに出るまでは、追跡する調査車両のヘッドライトを消したまま慎重に尾行する。夫の車は、市街地を抜けてから、郊外の小さな住宅地に入った

 (次回につづく)

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