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2020年8月17日月曜日

8月17日

 

偵シリーズバックナンバーより~

 

「父の想い 娘の苦悩

 

 娘夫婦のことで相談に訪れた父親。怒りをこらえ、努めて冷静に話そうとする痛ましい姿からは、よほどの事情があるのだろうと察せられた。

 娘は3年前の20歳の時、妊娠がきっかけで、一回り年上の相手と結婚した。相手を高校3年の時に一度自宅に連れてきたが、その軽薄な様子に強い嫌悪感を抱き、交際を強硬に反対、娘との関係もぎくしゃくしてしまった。

 娘は隠れて交際を続け妊娠。虚脱感と怒りが混沌とする。子供に罪はないと、最終的には結婚を許したが、こうならないように何とかできなかったのかと悔やみ続けた。

 実は、娘と父親は血がつながっていない。実の両親は娘が2歳の時に離婚。5年後、娘が小学校入学時に再婚した。弟ができたが、父親は、分け隔てなく、娘を愛した。

 しかし、平和な家庭に突然の不幸が訪れる。娘が中学1年の時、母親は、飲み会で泥酔した父親を車で迎えに行く途中、交通事故で帰らぬ人となってしまった。「迎えにさえ呼ばなければ」と自分を責め、ましてや最愛の母親を失った娘から、責められても当然なのに、娘はそんな素振りも見せず気丈に振る舞った。それからというもの、妻への供養は娘を幸せにすることだと懸命に生きてきた。その娘が、1カ月前から実家に身を寄せている。

 最初は、ただの夫婦喧嘩だと言っていたが、どうもこれまでと様子が違う。なかなかその真相がつかめなかった。3日過ぎても、夫から電話の一つもなく、こちらからも再三電話しても、出ることもなく折り返しの連絡もない。夫の実家に連絡しても、何も聞いていないと無関心に近い。娘に内緒で父親は、娘夫婦が暮らしていたアパートへ。車もなく部屋の灯りも点いていない。夫の実家の様子もみたが、やはり車がない。一旦は帰宅したが、気になって眠ることができなかった。

 日付が変わろうとするころに、もう一度アパートへ向かった。すると車もあるし、カーテンの隙間から灯りが漏れている。帰宅していることに安堵し、帰ろうと思った矢先だった。1台の軽自動車が止まった。娘夫婦が契約している駐車スペースだった。

 そのまま見ていると、スエット姿の若い女性が降りまっすぐアパートの一室へ。そこは娘たちが暮らす部屋だった。見間違えなのか?と3度も部屋の前まで足を運び確認したが、間違いなかった。

 言葉にできないほどの怒りと不安が渦巻く。しかし、まず娘から真相を訊きださないことには、何もできない。父親は真剣に娘と向き合った。そして、父親には知る由もなかった娘の夫に隠されていた本質が明らかになっていく。絶対に許すことはできない。父親の思いを背負って調査が始まった…。

 (次回に続く)

 *本文はいくつかの事例を基に構成されています。盗用・無断転用・無断転載を一切禁じます。

 

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