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2021年6月21日月曜日

6月21日

 


探偵シリーズバックナンバーより

「『投資詐欺』失われた退職金

 

 「投資の話に退職金をつぎこんでしまった」と、県北に住む60代の女性。警察を含めあらゆる行政機関に相談しても詐欺としての立件は難しいといわれた。揚げ句の果てにはもうけ話に乗ったあなたが悪いというような言葉を浴びせられたという。

 弁護士に相談しても、相手の所在が分からないのでは、なすすべがないと言われた。そんな時、タウンページで見つけた調査会社に調査を依頼した。わらにもすがる思いだった。しかし、大金を取られた揚げ句、その会社は存在しないというだけの、杜撰(ずさん)な報告書が送られてきただけだったという。相談を聞く私たちにも、その怒りは容赦なくぶつけられた。

 この女性は、医療関係の団体職員として40数年勤務し、昨年の3月末に定年を迎えた。退職金の額は2千万円を超える。息子が5歳の時、夫は女をつくって家を出た。泣き言は絶対に言わない。女手ひとつで、子どもを育て上げた。会社には内緒で夜はパチンコ店の清掃の仕事をして必死に働き、ひとり息子は都内の有名私立大学を卒業し金融機関に就職することができた。

 そして、大阪の支店に配属されて間もなく、結婚したいと女性を連れてきたが、人を見下すような態度、言葉遣いに目を疑った。結局、息子に嫌われたくない一心で、女性とは作り笑顔で付き合い、息子は母親の気持ちを察することなく結婚した。

 そして、5年前の正月のこと、嫁の振る舞いに我慢の限界を超え大げんかになった。母親を擁護することもなく、息子は嫁と大阪に帰ってしまった。それ以来、帰省することはない。

 老後は息子には絶対に頼らず生活をする、と心に決めた。女性の平均寿命と退職金と年金を計算し、利殖をして資金を増やしたいと考えていた矢先、そこに現れた投資会社の営業マン。見た目も良く、よく話を聞いてくれた。これまでの人生や息子のことなどすべてを優しいまなざしで、時には涙を浮かべてまで聞いてくれた。一切、営業の勧誘はなかった。次第に心を開き、初めての訪問から10回目に、こちらから投資すると言った。営業マンは信じてくれてありがとうございます、と目を潤ませ何度も何度も頭を下げた。退職金の半分を振り込んだ。

 翌月末、想像を超えた高配当が振り込まれるようになった。半年を過ぎたころ、すっかり信用し、残りの1千万円も言われるがまま預けた。そして、配当金は振り込まれなくなり、電話も一切つながらなくなってしまった…。

 なぜ、こんなひどい目に遭わなければならないのか。依頼人は人目もはばからず号泣した。絶対に許してはいけない。GKグループの総力を挙げた捜索が始まった。

 (次回に続く)

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