Powered By Blogger

2021年6月11日金曜日

 



探偵シリーズバックナンバーより

「人生の転機」覚悟

 

 まず、手始めに夫が妻に相談もせずに購入したマンションの実態を探る。8階建てのマンションの7階にあるその部屋を張り込むためには、張り込み場所の選定が最も重要となる。玄関を押さえられる位置の選定だ。玄関は、道路向かい側のテナントビル屋上から確認する以外に場所はない。ここで肝心なことは、いかに気配を消してことにあたらなければならないかということ。最近の防犯意識の高まりから、不審者と思われるとすぐ通報されてしまう。

 細心の注意を払いながら、屋上に潜入し目を凝らす。そして、1時間ほど経過した時玄関から女性が出てきた。年は30代後半。おそらく、中国籍か韓国籍だろう。かたわらにはよちよち歩きの男の子の姿も確認できる。すると、同時刻に夫をマークしている追跡班から、夫がマンション方面に向かっているとの連絡が入る。案の定、夫はマンションに来た。自分で開錠して部屋に入る。あきらかに賃貸で貸しているということはない。想定したとおり、関係のある女性を居住させていた。

 ほどなく、買い物袋を下げた2人が部屋に戻った。15分ほどすると、夫が男の子を連れて、付近の公園で親子のように遊びはじめた。夕方、夫はマンションを後にした。帰宅するのかと思いきや、そこから15分ほどの2階建アパートの駐車場に車を乗り入れた。夫は車から降りない。すると、30歳前後だろうか、この女性も日本人ではなく、やはり、中国籍か韓国籍の女性に違いない。助手席に乗せ、まっすぐホテルに入り、3時間近く過ごし、パチンコ店に入った。夫は外泊はせずに、夜11時には自宅に戻った。

 1週間、夫を徹底的にマークすると、その行動パターンが明らかになった。会社を12時に出て、マンションへ行き、子供が学校から帰るまでそこで過ごす。その後、例のアパートへ向かい、その女性と毎日のようにパチンコへ行く。その内2日に1回はホテルへ行くという行動だ。父親が入院しているのに顔すら出さない。ここまで会社をもり立てたのも父親のおかげであるのにと思うと、探偵たちもやりきれない気持ちになる。

 さらに驚くことはこれだけではなかった。後日の素性調査で、その男の子は夫の子供であり、認知していることも判明したのである。現実を直視するにはあまりにもむごい真実が隠されていた…。報告時、妻は驚くほど毅然(きぜん)としていた。「未練はありません。覚悟を決めました。幸せな人生への転機ととらえます。」と言い残し、事務所を後にした。妻の明るく前向きな態度は、私たちに大いなる勇気を与えてくれた。

「現実と向き合う勇気をもつこと。これが、人生の大きな分岐点になると思います」と駒木代表取締役。

 (前回は、ホームページをご覧ください)

 *本文は依頼人の了承を得てプライバシーに配慮しています。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿