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2022年2月4日金曜日

2022年2月4日

 


探偵シリーズバックナンバーより~

 

「無防備な夫・覚悟を決めた妻

 

 「弁護士からの紹介で…」と県東に住む、30代の妻。小柄で、ショートカットが似合う。小気味いい話しぶりが印象的だ。赤いセルフレームが目の強さを印象づける。夫は、大手企業の管理職をしている。夫には、離婚歴がある。10年前に会社の同僚と職場結婚をしたが、舅(しゅうと)・姑(しゅうとめ)との折り合いが悪く、わずか半年で嫁が家を出た。

 妻にも、離婚歴がある。大きな兼業農家に嫁いだが、子どもができないことを姑になじられた。夫はかばってもくれず、嫌気がさして、3年間の結婚生活にピリオドを打った。それからすぐに派遣会社に登録して、夫の職場に派遣されてきたのが、依頼人である妻だった。同じ境遇もあってか、2年前に夫と再婚したのは自然の流れだったという。

 前夫は気が弱い半面、酒を飲むと暴れた。そのせいか、今の夫は酒が好きじゃないから結婚した、という。その夫が変わった。めったに飲まない夫が、去年の夏、スマートホンを手にしてからというもの、夜のみならず、休みの土日も頻繁に家を空けるようになっていったという。

 そしてある日、夫が酩酊( めいてい)し深い眠りについた時、妻は自責の念にかられながらも、そのスマートホンを手にしてしまった。すると、SNSで知り合ったとされる女性との赤裸々なやり取りが残されていた。その中には、密会場所として夫がアパートを契約したという内容もあった。フォトフォルダを開けてみると、そのアパートらしき部屋で、女性が枕を抱いて寝そべっている写真もあった。

 妻は、ショックというより、まるで無防備な夫のゆるさと、メールで使われていた絵文字や幼稚な言葉の表現などに、一気に夫に対する気持ちが興ざめした、と何かが吹っ切れたように淡々と話す。そこには、夫に対する恨みとか女性に対する嫉妬ではなく、これからの人生を見据えた強い人間としての妻が構えていた。

 そして、メールの内容から写真まで証拠になりそうなものは全てデジカメに写し弁護士に相談した。しかし、これだけでは浮気つまり不貞の証拠としては立証が難しい、密会場所の出入りを抑えることが必要と、GKに来た。調査日は忘年会イベントである管理職のゴルフの日とした。

 妻は、この日を調査日と決めた理由をこう語る。「これ見よがしに、忘年会のスケジュールをテーブルに置いて身の潔白をアピールしている」と。ゴルフ場から夫の車を尾行する。宇都宮市郊外の中華料理店。探偵も潜入すると、奥の広間でゴルフの成績発表をしている。20分後、夫が携帯を耳に当てながら店外へ出てきた。依頼人に確認しても夫からの電話はないという。間違いなく密会する。夫のにやついた顔がそれを証明していた

 (次回に続く)

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