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2021年7月30日金曜日

7月30日



探偵シリーズバックナンバーより

「婚活パーティー…偽りのプロフィール①」

 探偵シリーズの愛読者であるという50 代の母親が相談に来た。20 年前に夫と死別して、娘2人を女手一つで育てて来た。相談内容は33 歳になる長女のこと。長女は県内でも進学校と言われる女子高を卒業後、進学せずにある図書館の司書として地元に就職した。長女は極度の人見知りで、地味で友達もなく、趣味と言えば読書。時間さえあれば本を読んでいるという。恋愛経験もほぼなかったが、娘には自分の子を持つという喜びを得てほしいと、ただただ願ってやまない日々が続いていた。

 そんな折、ある行政主催の「婚活パーティー」の案内を目にした。近年、子供の代わりに親が参加するという企画も珍しくない。案内にあるものは親同伴もできるものだった。娘に話す。拒絶されるかと思いつつ母親の胸の内をさらけ出したら、娘は参加すると言ってくれた。パーティーに向けて、自信を持ってもらおうと、美容室・ネイル・エステ・化粧と母親なりに娘に磨きをかけた。すると娘の見違えるほどの変貌ぶりに驚いたと写真を差し出した。その前と後ではプロの我々でも戸惑うほどの変身だった。

 娘は自ら母親の同伴を断り、一人で参加した。帰宅した娘は自分からその結果を話してきた。すごくいい人とマッチングできたと。これまでの娘とは違うその変化に母親は驚き、うれしかったという。その男性は娘よりも5歳年上の38 歳。離婚歴はあるが子供はいない。出身は埼玉県で、父親の転勤を機に県北へ移住しそこで同居しているという。都内の私立大学を卒業後、一度中学の教職に就いたが、閉鎖的な環境になじめずに、現在は大手学習塾の講師として隣県まで新幹線通勤しているという。男性の勤務形態が不規則なため、週2回会える時もあれば、月に1回しか会えないこともあるが、結婚まで行けたらいいと家に招待するように娘に話した。

 そして、その男性が家に来た。そこで母親は大きな違和感に包まれたという。とても38 歳には見えないし、饒舌(じょうぜつ)で落ち着きがなく調子がいい。実家のことを聞いても一貫性がない。信用という点でとても気にかかり、正直落胆したとしか言いようがないと。その他にも気になったことが出て来た。食事はすべて割り勘。土日祭日は仕事という理由で一切会ったこともなく、泊りのデートをしたことがない。娘が実家に行きたいと言っても、父親の体調がよくないからとお茶を濁される。交際して1年がたとうとしている。娘は何の疑いもなく交際している。真実ならそれはそれでいいと、その男性の素性調査をすることに。調査開始。「本当のことと嘘を巧妙にブレンド」した悪意が暴かれていく。

 (次回に続く)

 *本文はいくつかの事例を基に構成されています。盗用・無断転用・無断転載を一切禁じます。

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